疫学:コウモリ由来コロナウイルスがヒト細胞に侵入する経路を特定
Nature
2026年4月23日
Epidemiology: Gateway for a bat coronavirus to enter human cells identified
コウモリ由来のアルファコロナウイルス(コロナウイルスの主要なグループ)の一部には、これまで知られていなかった細胞内ゲートウェイを利用してヒトの細胞に侵入し得ることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。現時点では、ヒトへの感染を示す確固たる証拠は検出されていないものの、この発見により、これまでほとんど研究が進んでいなかったアルファコロナウイルス群におけるパンデミックリスクの評価範囲が広がる可能性がある。
ヒトの感染症の約60~75%は、動物に由来すると推定されており、人獣共通感染症の伝播は世界的な公衆衛生上の主要な懸念事項となっている。COVID-19(Coronavirus disease 2019;新型コロナウイルス感染症)パンデミック以降、動物由来のウイルスがヒトの細胞に感染するかどうかを理解することへの注目が高まっている。コロナウイルスにおいて、この過程はウイルスのスパイクタンパク質と宿主細胞上の受容体との相互作用に依存している。これまでに6つの受容体が同定されているが、その知見のほとんどはSARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2;重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)やMERS-CoV(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus;中東呼吸器症候群コロナウイルス)などのベータコロナウイルスにもとづくものである。一方、おもにコウモリの間で流行する多様性の高いグループであるアルファコロナウイルスについては、依然として理解が限られている。
この知見の空白を埋めるため、Giulia Galloら(ピルブライト研究所、ケンブリッジ大学〔英国〕)は計算機的手法を用い、アルファコロナウイルスの既知の遺伝的多様性の大部分を代表する40種類のスパイクタンパク質を選定した。これらのスパイクタンパク質を実験室で安全に扱える疑似ウイルスに組み込み、異なる種由来の既知のコロナウイルス受容体ライブラリーに対して試験を行った。コウモリ由来のアルファコロナウイルス・スパイクタンパク質の大半は、これまでに同定された受容体を一切利用できなかった。しかし、ケニアのハートノーズコウモリ(アフリカアラコウモリ)から最初に分離されたCardioderma corコロナウイルス由来の1つのスパイクタンパク質は、既知の受容体とは独立してヒト細胞に侵入することができた。ヒト細胞表面タンパク質の大規模スクリーニングにより、CEACAM6(Carcinoembryonic Antigen-related Cell Adhesion Molecule 6;癌胎児性抗原関連細胞接着分子 6)が侵入受容体であることが特定され、この発見は構造的および機能的解析によって裏づけられた。アフリカ、そして程度は低いもののユーラシア由来の関連ウイルスも、同様の受容体利用パターンを示した。
コウモリの採集現場付近に住む人々からの血液サンプルには、広範な感染の証拠は見られず、ヒトへの感染拡大の可能性は依然として低いことが示唆された。それにもかかわらず、本研究はアルファコロナウイルスがヒトで発現する受容体と結合し得ることを実証しており、人獣共通感染症の発生を事前に特定するための指針を提供するものとなっている。
- Article
- Open access
- Published: 22 April 2026
Gallo, G., Di Nardo, A., Lugano, D. et al. Heart-nosed bat alphacoronaviruses use human CEACAM6 to enter cells. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10394-x
News & Views: A bat coronavirus can enter human cells through a previously unknown gateway
https://www.nature.com/articles/d41586-026-00908-y
doi: 10.1038/s41586-026-10394-x
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