遺伝学:古代アンデス人は失われたラクダ科動物の系統を狩猟し、飼育していた
Nature Communications
2025年12月17日
Genetics: Ancient Andeans hunted and herded lost lineages of camelids
古代アンデス社会は、食料や輸送手段などの資源として、現在絶滅したラクダ科動物(camelids)の系統に頼っていたという遺伝子解析結果を報告する論文が、今週のオープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この発見は、当時のラクダ科動物が家畜としてどのように利用されていたかについて新たな証拠を提供する。
南米のラクダ科動物(ラマやアルパカを含む反芻哺乳類の一群)は、アメリカ大陸で家畜化された唯一の大型群生動物であり、古代アンデス社会にとって重要な食料、繊維、および輸送手段の供給源であった。これまでの研究では、ラクダ科動物は紀元前3000年までに家畜化されていたことが示されている。しかし、野生種と家畜種の骨格が類似しているため、物理的証拠からこの過程の詳細を特定するのは困難であった。
Michael Westburyら(コペンハーゲン大学〔デンマーク〕)は、チリのトゥラン渓谷(Tulán ravine)遺跡から発掘された約3,300~2,300年前のラクダ科動物75体の遺骸から古代DNAを分析した。そのうち26体をさらに調査した結果、現存する家畜ラマの祖先と考えられるのは雄ラマ1体のみで、残りは絶滅したラクダ科動物の系統に属することが判明した。現代と古代のラクダ科動物種の関係性を分析した結果、残りの古代個体は2つの絶滅集団に属していた可能性が示された。1つはLama guanicoe(グアナコ;ラマの祖先と考えられる)に最も近縁だが異なる系統、もう1つはVicugna vicugna(ビクーニャ;アルパカの祖先と考えられる)に最も近縁だが異なる系統である。ただし、研究者らは、現代の家畜ラクダ科動物と野生ラクダ科動物の交雑により、野生祖先の特定には不確実性があると指摘している。また、雄と雌の比率がほぼ同等であったことから、個体は野生で人間に狩猟されたか、あるいは家畜化されて群れで飼育され、雄が選択的に淘汰された可能性が示唆された。
これらの発見は、トゥラン渓谷のラクダ科動物が狩猟と飼育の両方によって管理されていた可能性を示している。著者らは、現生のラマとアルパカの祖先を特定するためにはさらなる研究が必要であると述べている。
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- Published: 16 December 2025
O’Hare, C., Diaz-Maroto, P., Cartajena, I. et al. Palaeogenomics suggest domesticated camelid herding and wild camelid hunting in early pastoralist societies in the Atacama Desert. Nat Commun 16, 11007 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-66343-1
doi: 10.1038/s41467-025-66343-1
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