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生物学:新しい抗毒素が蛇咬傷から守る

Nature

2025年10月30日

Biology: New antivenom protects against snake bites

Nature

アフリカに生息する最も危険な蛇──マンバ、コブラ、およびリンカルス(rinkhals)を含む──による咬傷から守るための実験的な組換え抗毒素(antivenom)が、マウスでの治療に有望な結果を示した。Nature にオープンアクセスで掲載されるこの発見は、蛇咬傷被害者に対するより安全で効果的な治療法の開発に貢献するかもしれない。

毒蛇による咬傷は、サハラ以南のアフリカにおける重大な健康問題であり、毎年数千人の死者や重傷者を出している。現行の抗毒素は、動物の血漿から作られており、高価で品質が不安定な上、時に副作用を引き起こす。また、医学的に重要なすべての蛇種に対して効果を発揮せず、重度の組織損傷を防ぐこともできない場合が多い。

Andreas Laustsenら(デンマーク工科大学〔デンマーク〕)は、蛇毒に含まれる主要毒素を標的とする「ナノボディ(nanobodies)」と呼ばれる人工タンパク質を組み合わせて新たな抗毒素を開発した。これらのナノボディは、コブラ、マンバ、およびリンカルスを含む18種のアフリカ産蛇の毒液でアルパカとラマを免疫させた結果、特定されたものである。マウス実験では、この抗毒素は17種の蛇による咬傷死を防ぎ、最も有害な毒による組織損傷を軽減した。既存の市販抗毒素Inoserp PAN-AFRICAよりも、試験した全蛇種における死亡と皮膚壊死の防止効果で優れていたが、グリーンマンバとブラックマンバの毒に対しては部分的な防御効果しか示さなかった。

この発見は、広範な蛇咬傷予防が少数の成分のみで達成可能であることを示唆しており、多数の抗体の混合が必要だという従来の考え方に異論を呈している。著者らは、今後の研究では抗毒素の耐久性向上と臨床環境での安全性試験に焦点を当てるべきだと提案している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Ahmadi, S., Burlet, N.J., Benard-Valle, M. et al. Nanobody-based recombinant antivenom for cobra, mamba and rinkhals bites. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09661-0

News & Views: Treatment made that is effective against a wide range of snake venoms
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03216-z

doi: 10.1038/s41586-025-09661-0

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