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経済学:移民と現地人の賃金格差に対処する

Nature

2025年7月17日

Economics: Addressing the immigrant–native pay gap

Nature

移民労働者の平均所得は、その国の現地人より17.9%低いことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。両者の賃金格差の4分の3は、移民が高収入の職に就く機会が限られていることに起因している。この調査結果は、移民とその国の現地人との間の分離を減らす政策の必要性を示している。

低所得国からヨーロッパや北米のような高所得国への世界的な移民が続く中、移民を社会の基盤に組み込むことは根強い課題である。移民は一般的に、現地人よりも賃金が低く、その格差は時間の経過とともに縮まり始めることもあるが、生涯を通じて残るのが普通である。しかし、このような賃金格差をもたらす直接的な原因は、十分に研究されていない。

Are Skeie Hermansenら(オスロ大学〔ノルウェー〕)は、9カ国(カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、および米国)の1,350万人の移民労働者と現地人労働者のデータを分析した。その結果、賃金格差全体の4分の3は、移民が高収入の仕事に就けないことに関連していることがわかった。この現象は、分析対象となった9カ国すべてで、また、アジア、ラテンアメリカ、中東、北アフリカ、およびサブサハラ・アフリカからの移民で一貫して観察された。残りの格差は、移民が同じ雇用主で同じ仕事をした場合、現地人より賃金が低いことによる。

著者らはまた、移民の平均年収は移民でない現地人より17.9%低く、その子どもたちの年収は平均5.7%低いことも明らかにし、移民の給与に世代差があることを示している。移民と現地人の賃金格差が最も大きかったのはスペインとカナダで、移民は現地人より最大28–29%低かった。移民と現地人の賃金格差が最も小さかったのは、アメリカ、デンマーク、およびスウェーデンで、移民は現地人より7–11%少なかった。

著者らは、賃金の格差や高収入の仕事への障壁は、例えば、雇用や昇進における偏見を対象とする政策や、労働者と雇用主を結びつけるための職業支援プログラムによって対処できると指摘している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 8 (働きがいも経済成長も)およびSDG 10(人や国の不平等をなくそう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases (https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )」をご覧ください。

Hermansen, A.S., Penner, A., Boza, I. et al. Immigrant–native pay gap driven by lack of access to high-paying jobs. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09259-6

 

doi: 10.1038/s41586-025-09259-6

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