進化:擬態は見る者の目に依存する
Nature
2025年7月3日
Evolution: Mimicry is in the eye of the beholder
捕食者の認識は、有害な生物に擬態して捕食を避ける動物が求める正確さのレベルに重要な役割を果たすことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。さまざまな精度で3Dプリントを用いて作成されたスズメバチ(wasp)の模倣体を用いた実験により、鳥は有害な昆虫と無害な模倣体の微妙な違いを区別できることが明らかになった。一方、他の捕食者はより容易に欺かれることが分かった。
ベイツ型擬態(Batesian mimics)は、捕食者を遠ざけるために危険あるいは不味い生物に似せた無害な生物のことである。例えば、一部のハナアブ(hoverfly)の種(Syrphidae)は、スズメバチ(Vespidae)に似ているが、この擬態はほぼ完璧なものからほとんど存在しないものまで幅広い。捕食者から保護する効果があるにもかかわらず、なぜ完璧な擬態が進化しなかったのかは不明である。一つの仮説は、模倣者が複数の有害な生物に似せることで、複数の捕食者を遠ざけ、より効果的に保護される可能性があるというものだ。
Christopher Taylorら(ノッティンガム大学〔英国〕)は、この仮説を検証するため、非擬態のハエからさまざまなタイプのハナアブ、そしてスズメバチまで外見が異なる3Dプリントの昆虫を作成した。その後、鳥と無脊椎動物の捕食者にこれらの獲物を提示し、反応を調べた。鳥は微妙な違いを区別する優れた能力を示し、主に「安全に食べられる」3Dプリントで作成された獲物を選択した。しかし、この能力は、模様や形状よりも色や大きさの特徴で特に顕著であった。複数の有害昆虫に類似した擬態であっても、捕食者からの追加の保護効果は認められなかった。一部の無脊椎動物捕食者(カニグモ〔crab spiders〕、ハエトリグモ〔jumping spiders〕、およびカマキリ〔praying mantises〕など)は、異なる昆虫を区別する能力が低いように見えた。著者らは、これが一部の不正確な擬態が存続する理由を説明するのに役立つ可能性があると結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 02 July 2025
Taylor, C.H., Watson, D.J.G., Skelhorn, J. et al. Mapping the adaptive landscape of Batesian mimicry using 3D-printed stimuli. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09216-3
doi: 10.1038/s41586-025-09216-3
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