社会科学:幼少期における数学能力の男女差
Nature
2025年6月12日
Social sciences: Early childhood gender gap in mathematics performance
フランスの約300万人の小学1年生と2年生を対象にした分析によると、数学の成績で男子に有利な男女格差(gender gap)は、就学4ヵ月後に明らかになった。この研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。
これまでの研究では、アメリカやフランスのコホートで観察されたように、早期教育の段階から数学的能力において男女の差があることが示されてきた。これらの研究では、なぜこのようなギャップが生じるのか、両親や教師の態度(ジェンダー・ステレオタイプなど)なのか、あるいは数学への不安(女子に多く見られる傾向がある)なのかを理解しようとしてきたが、これらの結果は時代遅れである。
Pauline Martinotら(パリ・シテ大学〔フランス〕)は、2018年から2022年にかけて実施された全国的な評価プログラムから、フランスの小学1年生と2年生の児童(5歳から7歳)265万3,082人のデータを分析した。その結果、入学当初は算数の平均的な成績に男女差はほとんどなかったが、わずか4カ月後には男女間に顕著な差が現れ、男子が有利になることがわかった。この差は、2年生の初めには4倍になっていた。Martinotらは、生徒の得点のばらつきはフランス全土で観察され、社会経済的地位、実施された数学テストの種類、および学校が公立か私立かとは無関係であることを発見した。
著者らは、この研究の重要な限界として、学年度の初め、4ヵ月後、および1年後の3時点のデータしか観察していないことを指摘している。そのため、数学の男女格差が時間とともにどのように変化するかについての詳細な情報を得ることができず、格差の原因となる具体的なメカニズムを解明する可能性が限られている。Martinotらは、政策立案者は、幼稚園など、生徒の教育のできるだけ早い段階でこの格差に対処することを検討すべきだと提案している。
- Article
- Published: 11 June 2025
Martinot, P., Colnet, B., Breda, T. et al. Rapid emergence of a maths gender gap in first grade. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09126-4
doi: 10.1038/s41586-025-09126-4
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