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遺伝学:大麻使用障害の遺伝学的解析

Nature Genetics

2023年11月21日

Genetics: Genetics of cannabis use disorder

大麻使用障害に関連する遺伝的リスク因子がゲノムワイド関連解析によって明らかになり、大麻使用障害と他の形質との関係に関する知見も得られた。

大麻使用者の約3分の1が発症する大麻使用障害は、問題のある大麻使用パターンの1つであり、臨床的に問題となる障害や苦痛をもたらすものと定義される。これによってもたらされる健康への悪影響としては、認知機能の低下や一部のがんのリスク増大などがあり、社会に及ぼす影響としては、大麻の影響下での生産性低下や事故などがある。大麻使用に対する寛容性が高まるにつれ、大麻使用障害に伴うリスクを理解する必要性も大きくなっている。

今回、Joel Gelernter、Daniel Leveyらは、大麻使用障害の発症リスクに影響を及ぼす遺伝要因を調べるため、大規模なゲノムワイド関連解析を実施し、それに引き続き、複数の祖先系集団からなる105万4365人(ヨーロッパ系88万6025人、アフリカ系12万3208人、混血アメリカ人3万8289人、東アジア系6843人)のデータを用いてメタ解析を行った。次に、この解析結果を利用して、他の薬物使用や、精神医学的特性、行動特性と大麻使用障害との間に共通する遺伝的リスク要因がないか調べ、さらに因果関係の有無を探索した。その結果、ヨーロッパ系集団とアフリカ系集団において、大麻使用障害といくつかの形質(喫煙開始、アルコール依存など)の間に正の遺伝的相関が認められた。また、ヨーロッパ系集団においては、大麻使用障害が肺がんリスクの原因に関与している可能性が遺伝学的に裏付けられた。このように推定された因果関係が将来予期せぬ公衆衛生上の結果をもたらす可能性について、論文中で指摘されている。

著者らは、今回の解析で、喫煙の影響を考慮しようと試みたが、大麻使用、喫煙と将来の健康転帰の複雑な関係を明らかにするためにはさらなる研究が必要なことを指摘している。
 

doi: 10.1038/s41588-023-01563-z

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