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科学コミュニティー:障害のある博士号取得者は米国の学術界で低賃金であり過小評価されている

Nature Human Behaviour

2023年11月28日

Scientific community: PhD graduates with disabilities are underpaid and underrepresented in US academia

米国の科学・技術・工学・数学(STEM)領域の博士号取得者で、若い頃(25歳以前)から障害を抱える人の学術界における年収は、障害のない博士号取得者と比較して1万4360ドル低いことを明らかにした論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。

これまでの研究で、米国の女性や過小評価された人種的マイノリティーの人々は、STEM領域の雇用において賃金格差や不平等な扱いを受けていることが報告されていた。障害のある科学者やエンジニアは、米国の就業者全般よりも雇用率が低い可能性がある。しかし、STEM領域における障害のある博士号取得者に見られる格差に関するデータは不足している。

今回、Bonnielin Swenorらは、25歳より以前から障害を抱える博士号取得者と、25歳以降に障害を負った博士号取得者を、障害のない博士号取得者と比較し、賃金や存在感における格差に関する証拠を調べた。具体的には、1973~2017年に学位を取得した約115万人の米国の理系博士号取得者に関するデータを使用した。これらのサンプルのうち、70万4013人が現在でもSTEM領域で働いていた(後年に障害を経験したと報告した3万6807人と、年少期から障害があると報告した2万544人を含む)。Swenorらは、このサブセットにおいて、社会経済学的背景、仕事、学位に関連する特性によって個人のマッチングを行った。その結果、雇用部門全体において、障害のあるSTEM博士号取得者の年収は、障害のない博士号取得者よりも10580ドル少なく、学術界においては1万4360ドル少ないことが明らかとなった。また、障害のある博士号取得者には、学部長や学長といった高位の学術職や、終身在職権を有する人が少ないことも判明した。

今回の知見から、米国のSTEM領域の博士号取得者には賃金と存在感に格差があることが明らかとなった。Swenorらは、こうした差別を是正するために構造的な改革が必要であると訴えている。

doi: 10.1038/s41562-023-01745-z

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