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ヒトの進化:ヒト族がジャイアントハイエナと動物の死骸の食べ残しを争ったことを示す先史時代のシミュレーション

Scientific Reports

2023年9月29日

Human evolution: Hominins challenge giant hyenas for carcasses in Prehistoric simulations

前期更新世後期(約120万~80万年前)の南ヨーロッパで生活していたヒト族(ヒトとその絶滅近縁種が含まれる分類群)は、剣歯虎やジャガーが食べ残していった死骸をジャイアントハイエナと争う能力を持っていた可能性のあることが、モデル化研究により明らかになった。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。この知見から、ヒト族の中規模グループは腐肉食の成功率が最も高かった可能性が示唆された。

これまでの研究で、南ヨーロッパでは、剣歯虎が食べ残していった一定数の動物の死骸があったために初期ヒト族の集団が生き延びることができたという学説が発表された。しかし、ヒト族が、この食料資源を利用する上で、他の大型腐食性動物(例えばジャイアントハイエナ)に邪魔されていたかどうかは分かっていない。

今回、Ana Mateos、Jesús Rodríguezらは、前期更新世後期のイベリア半島におけるヒト族とジャイアントハイエナ(Pachycrocuta brevirostris)の腐肉(死んだ動物の肉)を巡る競争をモデル化するためのシミュレーションを行った。このシミュレーションでは、剣歯虎(Homotherium latidensとMegantereon whitei)とヨーロッパジャガー(Panthera gombaszoegensis)が食べ残して放置された腐肉の量が、ハイエナとヒト族の個体群が生き延びるために十分だったかどうかと、これが腐肉食を行うヒト族のグループのサイズによって左右されたかどうかが検討された。

その結果、腐肉食を行うヒト族がジャイアントハイエナを追い払えるほどの大きさのグループ(5人以上)を形成すると、シミュレーション終了時にはヒト族の人数がジャイアントハイエナの個体数を上回った。これに対して、腐肉食を行うヒト族のグループが非常に小さい場合には、捕食者の密度(つまり死骸の入手可能性)が高い場合にのみ、ヒト族はシミュレーションの終了時まで生き延びることができた。また、今回のシミュレーションからは、腐肉食を行うヒト族のグループに最適なサイズが存在する可能性が示唆され、10人を超えるヒト族のグループは剣歯虎やジャガーを追い払うことができるが、13人以上のグループではエネルギー消費を維持するためにもっと多くの死骸を確保する必要のあることが判明した。ただし著者らは、このシミュレーションでは、ハイエナや剣歯虎、ジャガーを追い払うために必要なヒト族の人数は事前に決まっており、任意に割り当てられていたため、ヒト族のグループの最適なサイズを突き止めることはできなかったと指摘している。

以上の結果を総合すると、前期更新世後期の南ヨーロッパで中規模なグループを形成していたヒト族は、ジャイアントハイエナと競合しながら、死骸を採餌して定期的に食料を得ていた可能性のあることが示唆される。著者らは、特に植物資源が不足した冬の間は、集められた死骸がヒト族にとって重要な肉と脂肪の供給源となった可能性があると推測している。

doi: 10.1038/s41598-023-39776-1

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