注目の論文
神経科学:マウスの新生仔の鳴き声に対する母親の応答を調べる
Nature
2023年9月21日
Neuroscience: Investigating maternal responses to infant cries in mice
新生仔マウスの鳴き声に対する母親の応答の基盤にある神経回路について記述した論文が、Natureに掲載される。著者らは、これがマウスの母親による仔の保護を長期間持続させるための重要な機構になっているという考えを示している。
オキシトシンというホルモンは、母親の生理機能や行動にとって重要なことが知られており、例えば、分娩や授乳期間中の射乳に関与している。ヒトの場合、乳児の泣き声は乳児が苦痛を感じていることの強力なシグナルであり、授乳期間中の母親の大部分は、泣き声に対して、オキシトシン放出、視床下部活動の活発化、乳児を慰める行動といった応答を示し、時には射乳が起こる。しかし、助けを求める乳児の泣き声に関する聴覚情報をオキシトシンニューロンに伝達する神経回路は解明されていない。
今回、Robert Froemkeらは、乳児の泣き声が母親のオキシトシン放出を誘発する神経回路を調べるためにマウスの研究を行い、母親に新生仔の発声を聞かせて、オキシトシンニューロンの神経活動を記録した。その結果、オキシトシンニューロンは、視床の後髄板内核という脳領域からの入力を介して応答することが分かった。この神経回路は、オキシトシンの放出と新生仔の回収を制御することが判明し、仔からの感覚的手掛かりを母親のホルモンネットワークに組み入れて効率的な養育を促進するという機構が明らかになった。
今回の知見は、子からの感覚的手掛かりが神経回路によって処理されて、母親の行動を変化させるオキシトシンなどの神経調節物質の放出が活性化する過程を理解するために役立つ。
doi: 10.1038/s41586-023-06540-4
注目の論文
-
9月19日
気候変動:将来の干ばつは予想以上に長期化する可能性Nature
-
9月17日
神経科学:妊娠に伴う脳の変化を調査するNature Neuroscience
-
9月17日
健康:孤独と疾病の関連性を再評価するNature Human Behaviour
-
9月12日
ゲノミクス:ラパ・ヌイの人口の歴史を再評価するNature
-
9月12日
動物学:偶然に発見されたハエに寄生する新種のハチNature
-
9月10日
発生生物学:マウスにおいて若い卵胞が老化した卵母細胞の発育を助けるかもしれないNature Aging