注目の論文

ウイルス学:遺伝的に安定した新規ポリオワクチン候補でポリオ根絶を試みる

Nature

2023年6月15日

Virology: Stable novel polio vaccine candidates may give eradication a shot

マウスの免疫応答を誘導し、ポリオ根絶の可能性を高めると考えられる2種類の新しいポリオワクチン候補を示した論文が、今週、Natureに掲載される。これらのワクチン候補は、弱毒化したポリオウイルスを使って作られており、以前のいくつかのワクチンよりも、ワクチン由来の毒性変異株が出現する可能性が低くなっている。

ポリオは、3つの型(血清型)のポリオウイルスによって引き起こされる。野生型ポリオウイルス(WPV)2型と3型は、不活化ポリオウイルスか弱毒ポリオウイルス(ポリオを引き起こさないように十分に弱毒化されているが、免疫応答は誘発する型)のいずれかを使用するワクチンの開発により、過去10年間に根絶された。しかし、アフガニスタンとパキスタンでは、依然としてWPV 1型が原因でポリオが発生しており、ワクチンに含まれていたウイルスが強毒型に進化したことで発生した別の2種類のポリオウイルスの伝播が続いている。

最近開発された、弱毒化した生きたポリオウイルスを使用した新しい経口2型ポリオワクチン(nOPV2)は、遺伝的に安定した状態が保たれ、免疫応答の誘導に有効なことが示され、ワクチン由来のポリオウイルス変異株に対して使用されている。この遺伝的安定性は、ウイルスの毒性回復を抑制する特定の遺伝的成分を組み込むことで得られた。今回、Raul Andino、Andrew Macadamらは、この手法をさらに発展させて、WPV1型ワクチン(nOPV1)の候補とWPV3型ワクチン(nOPV3)の候補を開発した。これらのワクチン候補は、ワクチン接種後に小さな変異が生じても、弱毒化した状態を保持することが、動物実験やディープシークエンシング解析によって確認された。また、nOPV1とnOPV3は、マウスに対して非常に安全であることが判明した。さらに、マウスにnOPV1、nOPV2、nOPV3を併用投与すると、3種類全てのポリオウイルスに対する抗体が産生され、ポリオ予防効果が得られた。

doi: 10.1038/s41586-023-06212-3

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