生態学:植物の世界的分布に対する欧州植民地主義の永続的影響
Nature Ecology & Evolution
2022年10月18日
Ecology: Lasting legacy of European colonialism on global plant distribution
ヨーロッパの諸帝国は、外地を植民地化する中で、植物の世界的分布に永続的な影響を残したことを明らかにした論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。
人が移動すれば、意図的かどうかによらず、植物も一緒に移動する。植物の移動距離は、15世紀に欧州による他大陸の植民地化が始まって以来、劇的に大きくなったことが知られている。
今回、Bernd Lenznerたちは、ヨーロッパの四大勢力(イギリス、スペイン、ポルトガル、オランダ)に着目し、かつて植民地化された世界各地の1183地域に見られる19250植物分類群の分布を調べた。ゼータ多様性として知られる生態学的尺度を利用すると、かつて同一の帝国に支配されていた地域(例えば、共にオランダの植民地となった南アフリカと北米の一部地域)に共通する植物の種数は、偶然の結果として期待される種数を上回ることが明らかになった。また、そのような地域的植物種群の経時的変化は、気候や地理的距離だけでなく、特定の帝国によって地域が支配された期間の長さにも影響されることが分かった。さらに、帝国内の重要な経済的、戦略的拠点も見いだされた。例えば、旧大英帝国では、オーストラリアとインドが他地域以上に多くの植物種を共有している。
こうした知見は、人間の社会経済学的行動が極めて長い期間にわたって生物多様性に与える影響を深く理解するのに役立つ。グローバル化とコネクティビティーの拡大が続いていることから、著者たちは、そうした影響はますます強くなるだろうと結論付けている。
doi: 10.1038/s41559-022-01865-1
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