1001系統のシロイヌナズナのゲノム解読をめざす
Nature Genetics
2011年8月29日
Working towards 1001 Arabidopsis genomes
植物生物学のモデル生物として用いられる小さな被子植物シロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana )のゲノム塩基配列に関する、2つの独立した研究成果が報告される。これらの論文では、アフリカの一部とヨーロッパ、アジアに見られる1,001系統のシロイヌナズナのゲノム全体にわたる塩基配列の差異の解明をめざす「1001ゲノムプロジェクト(1001 Genomes Project)」の第一段階について報告されている。
D Weigelたちは、Nature Genetics に掲載される論文で、80系統のシロイヌナズナのゲノム塩基配列について報告している。シロイヌナズナは、さまざまな気候と高度で自生しており、この80系統のシロイヌナズナは、自生範囲と種の多様性が示されるように選ばれ、ユーラシアに生息する8つの個体群からサンプリングされた。Weigelたちは、系統間の遺伝的差異を明らかにし、この差異が遺伝子の機能に及ぼす影響を考察した。そして、ごく近縁のシロイヌナズナ間で塩基配列を比較して、シロイヌナズナの進化とさまざまな環境への適応における重要な過程を明らかにした。
一方、R Mottたちは、18系統のシロイヌナズナのゲノムとトランスクリプトームの塩基配列決定と解析を行った。その結果を報告する論文が Nature (電子版)に掲載される。この18系統は、シロイヌナズナの地理的多様性と表現型の多様性が示されるように選ばれた。今回の研究では、従来の比較ゲノミクス研究の方法とは異なり、「多対多」の方法を用いて、個々のゲノムをほかのゲノムと個別的に比較した。この方法は、遺伝的差異の発見率を高め、比較ゲノミクスの新たなパラダイムを打ち立てるものと言える。
この2つの研究は、個体群にわたる遺伝的多様性を調べることで、シロイヌナズナの進化パターンとさまざまな自生環境に対する適応のパターンに見られる特徴を解明するための貴重な資源をもたらしている。
doi: 10.1038/ng.911
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