注目の論文

疫学:フランスの1度目のロックダウンが解除された直後にCOVID-19症例の過小検出が起こった

Nature

2020年12月21日

Epidemiology: Underdetection of COVID-19 after the first lockdown in France

フランスでは、2020年5月に全国的なロックダウンが解除された直後に、監視システムによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症候性症例の検出が過小になり、検出されなかった症例の割合が10例中9例だったとする推定結果が明らかになった。この研究知見は、その後の検出率が時間の経過とともに上昇したものの、検査システムがパンデミック(世界的大流行)を封じ込めるために必要な検出率を達成できていなかったことを示している。こうした研究結果を報告するVittoria Colizzaたちの論文が、Nature に掲載される。Colizzaたちは、「検査–追跡」をパンデミック封じ込めの効果的なツールにするためには、選択的検査を今以上に利用しやすくして、検査件数を増やすことが必要だという考えを示している。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を検出し、感染拡大を監視する戦略は、非常に重要なものと考えられており、それによって症例を特定して感染者を隔離し、地域社会内でのウイルスの伝播を防ぐことができる。この戦略が特に重要になるのは、長い時間と多額のコストをかけてロックダウンを行って有病率が低下した場合だ。ところが、感染者が無症状あるいは症状が軽いために検出されない可能性のある症例が大きな割合を占めることが、この戦略にとって若干の障害になっている。症状のあるウイルス感染の検出成功率を把握することは、検査システムの限界を理解する上で、また、COVID-19パンデミックの管理を改善する上で役立つ可能性がある。

今回、Colizzaたちは、2020年5月中旬〜6月末の7週間にフランスで発生した症候性SARS-CoV-2感染症の症例数を、ウイルス伝播の数理モデルを用いて推定した。このモデルは、入院患者に関する地域データを用いて較正され、2つの方法で検証された。第1の方法は、血清学的研究との比較で、第2の方法は、1週間の症候性症例数の予測値とそれに対応するウイルス学的に確認された症例のデータとその週の自己申告症状追跡データベースからの推定値との比較である。この調査期間中に発生した症候性感染症の症例数は約10万4000例と推定されたが、同じ期間中の確定症例数は1万4000強に過ぎなかった。検出率は、調査期間中に上昇していったが、6月末までに検出率の中央値が50%を超えたのは、調査対象の12地域のうち5地域だけだった。

症状追跡データベースのデータによると、調査期間中は、COVID-19に類似した症状を持つ者の31%しか医師の診察を受けていなかった。以上の知見を総合すると、ロックダウン直後の数週間にわたってSARS-CoV-2感染の大部分が検出されなかったことが示唆される。Colizzaたちは、COVID-19の感染拡大を抑制するためには、検査–追跡戦略を大幅に改善する必要があると提案している。そのためには、(例えば、医師が検査を処方しなければならないといった障壁を取り除いて)スクリーニング検査の件数を増やし、COVID-19に似た症状が出た場合に症状が軽度であっても医師の診察を受けることを奨励することが考えられている。また、検査方法の処理能力と分解能の全般的な改善も必要とされる。

doi: 10.1038/s41586-020-03095-6

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