注目の論文

進化学:エビに近い大きさのキメラ節足動物がもたらす進化の新知見

Nature

2020年11月5日

Evolution: Shrimp-sized chimeric arthropod yields evolutionary insights

節足動物の異なる分類群の特徴(例えば、5個の眼がついた眼柄)を合わせ備えた体の構造を持つ節足動物の化石の発見を記述したDiying Huangたちの論文が、今週、Nature に掲載される。この節足動物種は、Kylinxia zhangiと名付けられた。この名称は、中国の神話に登場するキメラ動物「麒麟」 とエビを意味する中国語を組み合わせて作られた。K. zhangiは、進化的形質転換とカンブリア紀前期の節足動物間の関係についての理解をさらに深めている。

節足動物の初期進化を解明することは、進化生物学の課題の1つになっている。カンブリア紀(約5億4100万年~4億8500万年前)の保存状態の良い化石によって、ある程度の知見が得られているが、カンブリア紀の節足動物の主要分類群間の関係は不明のままだ。

この論文には、中国雲南省の(カンブリア紀前期のものとされる)澄江生物相で発見され、これまでに報告されていない6件の節足動物種の化石標本が記述されている。この化石は、エビに近い大きさで、さまざまな節足動物の特徴を兼ね備えている。具体的には、バージェス頁岩で発見された謎の生物Opabinia regalisに見られる頭部と連結した5個の有柄複眼、アノマロカリスなどの捕食者が有する獲物を捕まえるための2つの大きな前部付属肢、そして、これとは別の絶滅した捕食性節足動物の分類群である大付属肢節足動物に似た体の構造があった。K. zhangiがこうしたキメラ形態を有していたことは、いろいろな節足動物の分類群への移行型種であった可能性のあることを示唆している。

また、系統発生解析の結果から、K. zhangiの前部付属肢と鋏角亜門(節足動物の亜門でサソリが含まれる)の口の前にある付属肢と大顎亜門(ハチなどの昆虫を含む分類群)の触角の間に類似性があることが示唆されている。Huangたちは、このような進化的新機軸の起源に関する知見を得る上でK. zhangiが役立つと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-020-2883-7

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