注目の論文

生態学:サンゴ礁のカメラが捉えたサメの存在

Nature

2020年7月23日

Ecology: Cameras on the reef tell a shark’s tale

サンゴ礁に生息するサメに関する世界的な調査から、漁業が世界のサンゴ礁サメ集団に大きな影響を与えていることが明らかになったことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。海中に設置した1万5000以上の映像撮影地点から得られたデータによれば、調査したサンゴ礁の5分の1近くでサメが生息していなかった。これらの知見は、サンゴ礁サメ集団を回復し、管理するための政策の指針となる可能性がある。

今回、Aaron MacNeilたちの研究チームは、計58の国、州、海外領土の371か所のサンゴ礁に設置された1万5165の映像撮影地点で3年間にわたって収集したデータを使って、サンゴ礁サメの状況を定量化する世界的な調査を行った。その結果、映像撮影地点の63%でサメが記録されておらず、371か所中69か所(19%)でサメは全く観察されなかった。この知見は、サンゴ礁サメの減少が世界の熱帯海洋のかなりの部分に広がっていることを示している。

また、MacNeilたちは、一連の管理慣行がサンゴ礁サメの個体数にどのような影響を与えるのかを調べた。その結果、サメ保護区(サメ製品に的を絞った捕獲やサメ製品の取引が禁止された地域)が設定されていると、保護区のない国と比較して、相対的個体数が50%多いことが分かった。MacNeilたちは、サメが捕獲されていて、現在のところ規制のない領域では、捕獲制限を導入することで地域的個体数が平均で15%増加する可能性があり、特定の装置の禁止と閉鎖地域の導入によって、個体数がそれぞれ平均で9%と8%増加する可能性があると推定している。

以上の結果は、サンゴ礁サメの世界的な状況に対する懸念が、特に西太平洋地域、インド洋地域、西大西洋地域において正当なものであることを示唆している。MacNeilたちは、今後も保全活動を行う余地は残っているが、環境保全のために最も適切な直接管理戦略は、地元の漁業や社会的規範、文化の内容だけでなく、サメの相対的個体数をある程度解明することにかかっていると考えている。

doi: 10.1038/s41586-020-2519-y

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