注目の論文

【考古学】「骨の湖」の謎解きに新たな手掛かり

Nature Communications

2019年8月21日

Archaeology: Insights into the mystery of Skeleton Lake

インドのループクンド湖(俗に「スケルトン・レイク」と呼ばれている)から採集された人骨(38人分)について、年代測定が行われて紀元800~1800年のものとされ、抽出されたDNAの解析によって祖先の異なる3つのグループに分類された。これらの人骨は、約1000年を隔てた複数の事象によって堆積したものであり、そのうちの1つのグループは、年代測定で紀元1800年頃のものとされ、東地中海地方に特有の祖先を有する14人が含まれている。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。

ループクンド湖は、ヒマラヤ山脈の海抜5000メートルを超える地点に位置する小水域で、その湖畔には数百体の骨格遺物が散乱している。これらの骨格遺物の起源を説明するためにいくつかの仮説が提唱されたが、この遺跡の性質のために、これらの遺骨の由来を判定することが難しかった。

今回、David Reich、Niraj Raiたちの研究グループは、ループクンド湖で発見された人骨(38人分)のDNA解析を行い、放射性炭素年代測定を行った。その結果、別々の時期にループクンド湖に到達した3つの遺伝的に異なるグループが同定された。そのうちの1つには、南アジア出身の23人が含まれており、人骨の年代は紀元前800年頃と決定され、2回以上の事象によって堆積したことを示す証拠が得られた。この他に、東地中海地方出身の14人と東アジア出身の1人については、いずれも紀元約1800年頃と年代決定された。今回の研究で得られた知見は、すべての人骨が1回の天変地異事象によって堆積したとするこれまでの学説に対する反論となっている。地中海地方からの移住者がいたという謎を解くには、記録文書の研究をさらに進める必要がある。

doi: 10.1038/s41467-019-11357-9

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