注目の論文

ネアンデルタール人消滅の謎を解くヒントは脳にある

Scientific Reports

2018年4月27日

Neanderthals’ brains hold clues to their disappearance

ネアンデルタール人の脳の構造は、その社会的能力と認知能力に影響を及ぼし、ホモ・サピエンスに取って代わられる原因の1つとなった可能性のあることを明らかにした論文が、今週掲載される。

今回、慶應義塾大学理工学部機械工学科の荻原直道(おぎはら・なおみち)、名古屋大学大学院情報学研究科の田邊宏樹(たなべ・ひろき)たちの研究グループは、ネアンデルタール人の頭蓋化石4つと初期ホモ・サピエンスの頭蓋化石4つの仮想鋳型を用いて、脳のサイズを再現した上で、1185人の被験者の脳のMRIデータを用いて、平均的なヒトの脳のモデルを作成した。次に、研究グループは、このコンピューターモデルを変形させて、頭蓋内鋳型の形状と一致させ、初期ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の脳の外観と両者間の個別脳領域の差異を推測した。

その結果、初期ホモ・サピエンスの脳はネアンデルタール人の脳より大きくはなかったが、小脳が大きいなど、脳の形態に有意な違いがあることが明らかになった。また、研究グループは、1095人の被験者の既存のデータを用いて、小脳の大きさと各種能力(例えば、言語の理解と産生、作業記憶、認知の柔軟性)の関係を調べた。これらの結果から、初期ホモ・サピエンスの脳とネアンデルタール人の脳に見られる違いは、初期ホモ・サピエンスの認知能力と社会的能力がネアンデルタール人よりも優れていた可能性を示していることが示唆された。これが初期人類の環境変化に対する適応力に影響を及ぼしたことで、ネアンデルタール人よりも高い生存確率につながったのかもしれない。

doi: 10.1038/s41598-018-24331-0

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