【宇宙生物学】土星の衛星「エンセラダス」に微生物がいるかもしれない
Nature Communications
2018年2月28日
Astrobiology: Microbes could potentially thrive on Saturn’s moon Enceladus
土星の氷衛星であるエンセラダスにおいて、推定された条件の下で、特定の微生物が繁殖し、二酸化炭素と水素ガスからメタンを産生している可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。また、この論文では、こうした微生物の生存を維持する上で十分な水素が、エンセラダスの岩石質の核で起こり得る地球化学的反応によって生成される可能性のあることも示唆されている。
エンセラダスには、氷の地殻の下に水を含んだ海洋があり、南極に熱水活動があり、さらに微生物によって産生され繁殖に利用されるメタン、二酸化炭素、アンモニア、分子状水素などのさまざまな化合物が存在していると考えられていることから、地球外生命の探索におけるホットスポットになっている。エンセラダスについて推定されているこうした条件の下では、メタン生成菌として知られる微生物が、二酸化炭素と分子状水素を利用して増殖し、メタンを副産物として放出し、繁殖している可能性があると推測されている。
今回、Simon Rittmannたちの研究グループは、3種のメタン生成菌を、実験室内において、エンセラダスで推定されているガス組成と気圧に近い条件で培養した。メタン生成菌の一種であるMethanothermococcus okinawensisは、他のメタン生成菌の繁殖を阻害する化合物(ホルムアルデヒドやアンモニア、一酸化炭素など)の存在下でさえも増殖し、メタンを産生した。また、エンセラダスの核で起こっている可能性のある低温の蛇紋岩化作用(岩石が地球化学的に変化する過程の1つ)によって、メタン生成菌の生存維持に十分な量の水素ガスが生成されている可能性のあることも判明した。
今回の研究結果は、メタン生成菌などの微生物が、理論上は、エンセラダスで繁殖し、メタンを産生できるとする学説を裏付けている。しかし、Rittmannたちは、メタンが非生物的な地球化学的過程によっても生成される点に注意すべきことを指摘しており、エンセラダスにおける生物的メタン生成と微生物の化学的特徴の探索は続ける価値があるという考えを示している。
doi: 10.1038/s41467-018-02876-y
注目の論文
-
9月12日
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
9月12日
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
9月11日
古生物学:トカゲのような生物の起源をさらに遡るNature
-
9月11日
環境:2023年のカナダ山火事の長期的な影響を評価するNature
-
9月10日
健康:大麻の使用は女性の生殖能力に影響を与えるかもしれないNature Communications
-
9月9日
気候変動:気温の上昇が添加糖の消費量の増加と関連しているNature Climate Change