【がん】がん治療に有望視されるアルコール依存症治療薬
Nature
2017年12月7日
Cancer: Alcohol-abuse drug shows potential for cancer treatment
アルコール依存症の治療薬が、がんで死亡するリスクを減らすことが明らかになった。この新知見は、アルコール嫌悪剤のジスルフィラム(アンタビュース、ノックビン)を抗がん剤として再開発できる可能性のあることを示唆している。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
過去60年以上にわたってアルコール依存症の治療に用いられてきたジスルフィラムに抗がん作用のあることは、これまでの研究で示されていた。しかし、その作用機構が解明されておらず、ジスルフィラムが作用する具体的な分子標的を特定できていないため、ジスルフィラムを抗がん剤として再開発できずにいた。
今回、Jiri Bartekたちの研究グループは、ジスルフィラムの効果を詳しく解明するため、2000~2013年に初めてがんと診断された3000人以上のデンマーク人(35~85歳)を対象として、ジスルフィラムの使用に伴うがんの転帰を調べた。その結果わかったのは、ジスルフィラムの使用を続けた患者のがん関連死が、がんの診断後にジスルフィラムの使用を中止した患者のがん関連死よりも少なかったことで、こうしたジスルフィラムの効果は、大腸がん、前立腺がん、乳がんなどさまざまながんにおいて観察された。さらにマウスと細胞株を使った研究も行われ、腫瘍に蓄積し、抗がん作用を持つジスルフィラムの代謝物が同定され、この代謝物が作用してがん細胞を死滅させる分子経路も明らかになった。
新薬開発の過程は多額の費用がかかり、長期にわたることが多く、失敗率も高い。従って、ジスルフィラムのようにすでに治療薬として認可された薬剤をがん治療薬の候補として再開発することは、(患者での安全性試験など)多くの試験が既に実施されているため、もう1つの新薬開発として注目を集めている。
doi: 10.1038/nature25016
注目の論文
-
7月16日
神経科学:老化と神経変性疾患のバイオマーカーを解明するNature Medicine
-
7月15日
健康:健康な高齢化における世界的な格差の要因の評価Nature Medicine
-
7月10日
ゲノミクス:タンパク質は古代のエナメル質に保存されているNature
-
7月10日
気候変動:クジラの糞が温暖化に関連する有毒藻類ブルームの大発生を記録するNature
-
7月8日
がん:1,100万人を超えると予測される胃がんの原因は細菌かもしれないNature Medicine
-
7月3日
ゲノミクス:古代DNAがエジプト人の祖先の謎を解明するNature