注目の論文

新たな2型糖尿病感受性遺伝子の同定

Nature Genetics

2008年8月18日

New susceptibility gene for type 2 diabetes

東アジアとヨーロッパ系の集団を調べた結果、2型糖尿病の発症リスクを高める複数の遺伝子多型が同定された。これらのリスク多型の1つについて、コピー数が1つ増えると、2型糖尿病を発症する確率が30~40%高くなる。こうした影響は、これまでに同定された2型糖尿病感受性遺伝子のほとんどを上回っており、唯一これよりも影響が大きいのは、TCF7L2遺伝子である。

今回Nature Genetics(電子版)に掲載される2つの研究グループの論文では、日本人の2型糖尿病患者を対象とした全ゲノム関連解析が報告されている。春日雅人らの研究グループは、KCNQ1遺伝子の多型が、2型糖尿病の高い発症リスクと関連していることを見いだし、その後、この関連を韓国と中国、スウェーデンの集団で再現した。一方、前田士郎も、日本人を対象とした研究で、KCNQ1遺伝子の別の複数の多型をリスク多型として同定し、シンガポールとデンマークの2型糖尿病患者集団において、この多型と2型糖尿病の関連を再現した。KCNQ1遺伝子には、カリウムチャネルのサブユニットがコードされている。同遺伝子の変異は、命にかかわる心臓不整脈と関連していることが非常に著名だが、同遺伝子は、膵臓でインスリン分泌を調節するという研究報告もある。

これらのリスク多型は、東アジアとヨーロッパ系の集団において、類似した影響を及ぼすが、その頻度は、ヨーロッパ系集団で相当に低い。このために、過去のヨーロッパ系集団での2型糖尿病の大規模研究において、これらのリスク多型が同定されなかったのかもしれない。疾患感受性多型の頻度が祖先の違いによって異なっている可能性を示す証拠は増えているが、上記2研究の結果も、ここに加わるものであり、非ヨーロッパ系の人々に対して全ゲノム関連解析を実施することの重要性を強調している。

doi: 10.1038/ng.207

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