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nature awards global grants for gut health
2025年助成者インタビュー

腸管バリアと微生物叢のつながりを探る

食事が腸内微生物叢を介して腸管バリア機能をどのように調節し得るのかを探る。

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腸管バリアに迫る

Global Grants for Gut Health(GGGH)プログラムは、新たな腸内微生物叢と宿主の相互作用の解明を通じて、ヒトの健康を増進させる手法を探る研究を支援する。

原文:Looking into the gut barrier

2025年GGGHプログラムは、ヒトの腸内微生物叢と腸管バリア機能を調節する上で、栄養が果たす役割に焦点を合わせており、その3人の受賞者とそのプロジェクトを紹介できることを誇りに思う。

キングス・カレッジ・ロンドン(英国)のマリオ・ファルキ(Mario Falchi)は、双生児研究によって、食事、腸管バリア完全性、免疫の相互作用を調べる。TwinsUKコホートを基盤とすることで、1万7000人以上の双生児からなる大規模集団において、腸管バリアの完全性に影響を及ぼし得る遺伝要因と、介入によって修飾可能な要因とを区別することが可能になる。この研究では、1250組の双生児を対象に、特定のメタボロームバイオマーカーのレベル差に着目し、その知見を詳細な食事、健康、生活様式のメタデータと統合する。この研究は、計算医学とバイオインフォマティクスを、実験室でのアッセイと組み合わせて実施される。ファルキらは最終的に、上皮損傷の予防や修復を促して腸管バリア完全性を高めることで、特定の疾病状態を改善し得る食事介入を特定することを目指している。

キリマンジャロ臨床研究所(タンザニア)のヴェスラ・クラヤ(Vesla Kullaya)は、タンザニアの人々において、農村型の食事から都市型への食事の移行が、腸の健康や炎症性疾患に影響するかどうかを調べる。食事や生活様式が腸の健康に及ぼす影響を検討したこれまでの研究の大半は、主として欧州系集団に焦点を当てており、そのためこの研究はグローバルな視点から、科学的知識の基盤に大きな貢献をもたらすだろう。都市部への移住が進む国々では、農村部の集団を対象に含めた研究を行うことがとりわけ重要である。植物性食品に富む食事を摂取する農村部の人々の微生物叢は、より多様で、炎症性疾患の発症率が低いことが示されている。クラヤらは、過去の大規模コホート研究の食事摂取データと、腸内微生物関連・炎症関連・透過性関連の各バイオマーカーの変化を調べる小規模な食事入れ替え研究の情報を関連付ける。自国の人々に適した炎症軽減のための食事指導を確立することは、その社会的受容を後押しするだろう。

イタリア学術会議・生物医学技術研究所(ITB-CNR)のフェデリカ・プリネッリ(Federica Prinelli)は、食事由来の代謝物が、加齢に伴う腸管バリアの完全性、認知機能、脳の健康にどのような影響を及ぼし得るのかを調べることを目指している。世界的に人口の高齢化が進む中、健康な老化を促進し、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす加齢関連神経疾患の発症を回避する機構を理解することが、かつてないほど重要となっている。この研究では、既存のイタリア人高齢者コホートから収集された食事データと各種メタデータを用いる。血液試料および糞便試料の追跡解析により、腸上皮バリアの完全性に影響を及ぼす食事由来の代謝物を突き止める。機械学習ツールを用いて大量のデータを解析し、特定の食品と特定の疾患の有無との関係性を明らかにする。プリネッリらは最終的に、認知機能の転帰と腸管バリアの完全性を改善する特異的なバイオマーカーや食事成分を特定することにより、健康な老化のための具体的な栄養指針を確立することを目指す。

これらの優れた研究プロジェクトは、栄養がヒトの腸内微生物叢および腸管バリアの機能をどのように調節しているのか、そしてそれが腸および全身の疾患の発症にどのような影響を及ぼし得るのかについての知識を広げてくれると、私たち審査委員会は確信している。3人の受賞者が、この極めて重要な研究で大きな成果を挙げられることを願っている。

最後に、審査に多大な貢献をいただいた審査委員のアミ・バット(Ami Bhatt)、ジグイ・チェン(Zigui Chen)、サラ・レビール(Sarah Lebeer)、竹田 潔(Kiyoshi Takeda)、ガブリエラ・ヴィンデローラ(Gabriela Vinderola)に、心から感謝を伝えたい。

カレン・P・スコット
審査委員長


腸管バリアの完全性の機構を英国の双子研究で探る

キングス・カレッジ・ロンドン(英国)で計算医学とバイオインフォマティクスを専門とするマリオ・ファルキ(Mario Falchi)は、宿主・微生物叢相互作用の専門家であるDavid Moyesらと共に、Global Grant for Gut Healthの助成金を活用して、英国の双子コホートにおいて、食事が腸管バリアの完全性と免疫をどのように調節しているかを調べる。

原文:Mechanisms of gut-barrier integrity to be explored in study of UK twins

マリオ・ファルキ(Mario Falchi)

マリオ・ファルキ(Mario Falchi)

Mario Falchiは、キングス・カレッジ・ロンドン(英国)のライフコース・集団科学大学院、双子研究・遺伝疫学部門に所属する計算医学のリーダー(reader:准教授相当)である。計算機科学、遺伝学、統計学を背景とし、ヒトの健康と疾患についての理解を深めることを目的として、マルチオミクス、臨床、環境、生活様式のデータを統合するための統計学的手法および機械学習手法の開発と応用に取り組んでいる。主な関心領域は、食事、腸内微生物叢、代謝、ヒトの健康の相互作用であり、特に加齢関連の病態に重点を置いている。

双子を研究することがなぜ有用なのか?

キングス・カレッジ・ロンドンの私たちの部門は、一卵性双生児と二卵性双生児を対象とした縦断研究であるTwinsUKを運営しています。30年以上前に設立されたこのコホートには現在、1万7000人以上の双子が登録されており、世界で最も詳細に特徴付けられた双子コホート1の1つです。TwinsUKでは、遺伝学、マルチオミクス、臨床、環境、生活様式に関する広範なデータが取得されてきました。私は計算機科学、遺伝学、統計学を背景としており、私のチームは、多層的なデータセットを統合する計算モデルを構築・適用することで、ヒトの表現型、分子形質、健康の背後にある要因の特定に取り組んでいます。双子を研究することで、遺伝的影響と、環境・食事・生活様式などの非遺伝的影響とを切り分けることが可能になります。

今回のプロジェクトの概要は?

私は腸管バリアにとりわけ強い関心を抱いています。というのも、腸管バリアは、適切に機能しているときには体が栄養素を吸収するのを助けつつ、腸内の有害な物質や微生物から私たちを守ってくれているのです。この腸のバリアについての理解を深めることは、あらゆる腸内微生物叢研究の基礎となるべきです。腸管バリア機能は、炎症や代謝の健康における重要な要因として認識されるようになっていますが、その根底にある関連性は、まだ十分には解明されてはいません。また、個人の腸管バリアの完全性が、食事への介入によってどう改善できるかについても、十分な知見が得られていません。実際の応用につながる成果を得るには、食事の情報を、個人の腸管バリア機能およびその機能不全に関するデータと統合することが不可欠です。私たちは既に、300人を対象としたパイロット研究で、食事と腸管バリアの完全性との関連について、興味深い結果をいくつか得ています。今回のGGGHプロジェクトでは、このパイロット研究を発展させ、TwinsUKの参加者2500人を対象に、腸管バリアの完全性の維持に関与するさまざまな血液中および腸管のマーカーを測定します。これらのデータを、食事、生活様式、さらには腸および微生物の生物学やヒトの生理学のさまざまな側面を捉える広範な分子データと統合する予定です。双子モデルを用いることで、生活様式や食事のような修正可能な要因と、主に遺伝によってもたらされる影響を区別することができます。2500人の対象者と、腸管バリアの完全性を評価する広範なマーカーパネルを用いることで、腸の完全性が全身の健康にどのように影響するかについてのより明確な全体像が得られるでしょう。

一卵性双生児の研究は、遺伝的要因と非遺伝的要因を切り分ける助けとなる(写真はイメージ)。Credit: Robert Recker/The Image Bank/Getty

選んだバイオマーカーとその選定理由とは?

私たちは、機能マーカーと、腸管バリアの状態を示すバイオマーカーの両方を含む、腸管バリア機能に関与する広範な分子パネルを測定します。例えば、腸管上皮によって産生され、抗菌防御を支え、損傷後の上皮表面の維持・修復を通じて腸の自己防御を助けるREG3AやREG4のようなタンパク質です。他の例としては、腸管上皮の維持・修復、ならびに抗菌防御機構に関わるサイトカイン性のシグナル伝達タンパク質IL-22、粘膜界面での過剰な炎症の抑制に関与する防御タンパク質SLPIなどです。これらのバイオマーカーを、パネル中の他の分子と共に調べることで、腸管バリアの状態、およびそれが食事や健康転帰とどう関連しているかを理解する手掛かりが得られると考えています。

懸念される特有の技術的課題は?

TwinsUKはこの研究に強固な基盤をもたらしてくれますが、この規模の研究全体で測定の一貫性を維持することは、依然として重要な技術的課題です。2500検体にわたって複数の分析対象物を測定するには、多数のアッセイプレートや複数のバッチにまたがる大規模な実験室処理が必要となり、こうしたことは、技術的なばらつきを生む要因となります。従って、これらの分子データを、技術的なばらつきや背景雑音から真の生物学的パターンを切り分けられるような方法で、食事、臨床、およびその他の生物学的情報と統合するためには、厳格な品質管理と堅牢な統計モデリングが不可欠となります。こうした技術的課題以上に大きな科学的課題は、因果関係を確立することです。私たちは、介入が可能であると考えられる特定のマーカーや分子の優先順位付けを含む、信頼性の高い知見のカタログを作成することを目指しています。私たちは、キングス・カレッジ・ロンドンの栄養科学部門と緊密に連携しており、既に共同で栄養介入研究を実施しています。私たちの目標は、得られた知見を現実世界の食事介入へと落とし込み、可能であればTwinsUKコホート内でそれらを評価することです。

この研究の応用の可能性は?

より大規模な食事介入試験を経ない限り、本格的な応用は推測の域を出ないと私は考えています。この研究は、腸管バリアがどのように機能するのかという生理学的基盤について、新たな知見と理解をもたらすはずです。私たちは、特定の病態において、腸管バリアの完全性を高めて損傷の予防や修復を助ける食事介入の可能性についての知見を得たいと考えています。また、薬剤やサプリメントによって直接標的化・操作できる分子やタンパク質を特定できるのではないかと期待しています。長い目で見た場合には、こうした知識はリスクの層別化、さらに将来的には個別化栄養にもつながる可能性があります。

今後の研究計画は?

生涯にわたる食事介入によって、私たちの健康を現実的にどこまで改善できるのか、その限界がどこにあるのかを理解したいと考えています。長期的な目標は、環境や生活様式の背景が異なる集団間で共通して見られる、頑健で再現性の高い腸管バリアの健康シグネチャーを突き止めることであり、それが最終的には広く適用可能な予防・介入戦略の策定に役立つことになるでしょう。このプロジェクトで得られた全てのデータと結果は、TwinsUKで既に確立されているデータアクセスの枠組みを通じて、より広い科学コミュニティーに公開され、他の研究グループも、関連する知見を土台として研究を発展させることができます。

参考文献
1. Verdi, S. et al. Twin Res. Hum. Genet. 22, 523–529 (2019).


食事が腸内微生物叢と脳の老化に及ぼす影響を探る

イタリア国立研究評議会(CNR)生物医学技術研究所の栄養疫学者フェデリカ・プリネッリ(Federica Prinelli)の研究チームは、Global Grant for Gut Healthを使って、加齢に伴って食事由来および腸由来の代謝物が、腸管バリアの完全性、認知機能、脳の健康にどのような影響を及ぼし得るかを調べようとしている。

原文:Exploring the impact of diet on the gut microbiota and the ageing brain

フェデリカ・プリネッリ(Federica Prinelli)

フェデリカ・プリネッリ(Federica Prinelli)

Federica Prinelliは、イタリア学術会議・生物医学技術研究所(ITB-CNR)のシニア栄養疫学者で、研究グループリーダーである。ヒト栄養学、生理学、疫学を専攻し、カロリンスカ研究所(スウェーデン)で博士研究員を1年間務めた後、IRCCSモンディーノ財団(イタリア)で主任研究者を務めた。2008年にITB-CNRに加わって以来、神経変性疾患、代謝性疾患、呼吸器疾患、ならびに長寿に重点を置きつつ、臨床的、生物学的、行動学的要因が複雑疾患の発症・進展にどのように関わるかを研究してきた。彼女の研究は、地域住民ベースのコホート、神経画像、マルチオミクス技術、臨床表現型解析を統合し、食事、腸内微生物叢、代謝、脳の健康を結び付ける機構の解明を目指している。

このプロジェクトのきっかけは?

私の研究は、慢性疾患、特に神経変性疾患、代謝性疾患、そして脳の老化に関連する食事の役割に重点を置いています。認知機能障害や認知症は、高齢化するあらゆる集団において、生活の質(QOL)の維持という観点からも、医療・介護のニーズという観点からも大きな課題です。軽度認知障害がより深刻な健康問題へと発展する前に、どのように介入すべきかは、まだ十分には分かっていません。近年、私は従来の疫学的手法と、分子プロファイリング、マルチオミクス、神経撮像技術を組み合わせるようになりました。これは比較的新しい研究分野であり、生活様式や食事が健康的な老化にどのように寄与するのかを探る道を開くものです。私たちの学際的なGGGHプロジェクトを通じて、食事が神経変性にどのような影響を及ぼし得るのか、そして腸内微生物叢がその過程をどのように調節しているのかを明らかにしたいと考えています。

このプロジェクトで使用するデータは?

イタリア北部ロンバルディア州に住む65歳以上の800人超を対象としたNutBrain研究の参加者の一部から得られたデータを用います。私たちはこれまでに、食事と神経心理学的状態に関する情報を収集しています。さらに参加者の約3分の1については、血液と糞便の試料も採取しています。この255人のサブグループでは、GGGH研究の一環として、腸内メタボロミクスとメタゲノミクスを含む新たな実験的評価を実施します。さらに食事の解析については、従来の質問票や食事日誌だけでなく、血液および糞便の試料に含まれる食事由来の代謝物の客観的測定値を用います。私たちが食物を摂取すると、腸内微生物叢は消化を助け、栄養素を抽出し、体がエネルギー源として利用できる代謝物を生成します。私たちは、栄養メタボロミクスとメタバーコーディングの手法を用いて、これらの代謝物と食物由来DNAを測定します。これにより、どの食物、どの栄養素が腸–脳軸において特異的な役割を果たしているのかに関する新しい情報が得られるとともに、認知機能に影響を及ぼす食事マーカーを特定できます。食事は極めて複雑な曝露因子であり、体内の食事由来の代謝物を正確に測定できるようになったことは、大きな転換点です。

腸と脳の間には密接なつながりがあることが広く知られている。Federica Prinelliは、食事、腸内微生物叢、そして老化に伴う脳の変化の間にある関係を探ろうとしている。Credit: Magicmine/iStock/Getty

複雑な食事の相互作用をどのように解き明かすか?

食事をモニタリングすることは、喫煙などについて把握することよりもはるかに複雑です。従来の食事研究の手法では、人々は、記憶を頼りに100品目以上の食品項目を含む質問票に回答する必要がありました。「過去1年間にトマトを使ったパスタを何回食べたか」「チーズを加えたか」「1回の量はどれくらいだったか」といった質問や食事日誌への記入は、直近の食事や間食ですら思い出すのが難しい人にとっては、なおさら困難なことです。個人の実際の食事を測定することは、極めて難しいのです。しかも私たちは、単一の栄養素を摂取しているのではなく、複数の栄養素を含む食事を摂取しており、それらの栄養素は互いに相互作用しています。このGGGHプロジェクトでは、従来の評価法を、血液および糞便の試料中に見いだされる食事関連の代謝物の客観的な測定結果で補完することで、この複雑さを解き明かそうとしています。私たちは、900種類以上の食物に由来する代謝物の検証済みライブラリーを用いて、このデータベースに注釈付けを行う予定です。これにより、個人が摂取した食物を思い出す際のバイアスを排除し、参加者の食習慣をはっきりと把握することができるはずです。また、腸管の透過性、すなわち腸管バリアに影響を及ぼす代謝物を特定したいと思っています。既に、ある種の食事パターンがバリアの透過性上昇と関連していることが分かっています。毒素や病原体が腸管バリアを通過すると、全身性の炎症が高まって、慢性疾患のリスクも増大します。私たちは腸管バリアの透過性の特異的バイオマーカーを3種測定し、さまざまな食物、腸管バリアの完全性、脳の健康の関係を調べます。さらに、腸内メタゲノミクスとメタボロミクスによって微生物叢を特徴付け、代謝物産生を担う機能的経路の理解を深める予定です。

用いるデータ解析手法は?

この研究では、大規模なマルチオミクスデータセットが生成されるため、包括的で堅牢な解析が必要となります。私たちのチームには、疫学者、バイオインフォマティシャン、生物統計学者、臨床医、生物学者が含まれています。まずは単純な相関解析から始めて、どのような初期的知見が得られるかを確認します。その後、次元の圧縮や回帰モデルを含む統計手法を適用し、より具体的な関連性を絞り込みます。特定の食物と、その結果としての神経認知アウトカムとの関連も探ります。さらに、アウトカムを、機械学習を用いて予測することにも取り組みます。例えば、ある人が特定の食物を定期的に摂取している場合、特定の障害を発症する確率が高くなる可能性があります。私たちは既に、脳全体の体積や白質・灰白質の体積などの構造的な指標に関する参加者の脳の詳細なMRIデータを保有しています。また、神経活動などの機能的な指標に関するMRIデータも持っています。食事が脳のさまざまな側面の変化に関与しているかどうかを調べ、これらの関連の基盤にある機序を明らかにしたいです。

外的要因が結果に影響する可能性は?

私たちは全てを制御できるわけではありません。しかし、関連性に影響を及ぼす可能性のあるあらゆる変数(例えば、薬剤の使用)について、モデル内で補正を行います。参加者は、臨床面と生活様式の両面から詳細に特徴付けられています。また私たちは、社会人口学的要因やジェンダーも考慮に入れます。男性と女性では食習慣が異なり、同じ食物を摂取していたとしても、腸内微生物叢の組成や脳の応答に違いがある可能性があります。もう1つの課題は、これら全ての変数を統合して、解析可能なメタデータベースを構築することです。ただし、このプロジェクトは単なるやみくもな探索ではありません。私たちは確固たる仮説に基づいて検証を進めていきます。

期待される実用的な応用は?

私たちは、認知機能アウトカムと、老化に伴う全般的な健康に関する食事バイオマーカーを特定したいと考えています。私たちの結果は、加齢に伴う特定集団を対象とした精密な栄養介入研究の設計に寄与するでしょう。また、食品・サプリメント業界が活用できる知見を提供し、新規の標的型サプリメントや機能性食品の開発につながることを願っています。疫学的観点からは、縦断研究を進めた後、高齢者集団の栄養ガイドラインについて、政策立案者や保健当局に情報をもたらすことができると期待しています。


アフリカの伝統食は腸管バリアの機能低下を抑制できるか

キリマンジャロ臨床研究所(タンザニア)の生物医学研究者ヴェスラ・クラヤ(Vesla Kullaya)が率いるチームは、Global Grant for Gut Healthの助成金を利用して、タンザニアの人々において食事と炎症の関連性を示したこれまでの研究を土台として、農村型の食事から都市型の食事への移行が腸の健康に及ぼす影響を調べる。

原文:Could traditional African diets counter gut-barrier damage?

ヴェスラ・クラヤ(Vesla Kullaya)

ヴェスラ・クラヤ(Vesla Kullaya)

Vesla Kullayaは、キリマンジャロ臨床研究所(タンザニア)で免疫学と微生物叢研究を専門とする生物医学研究者であり、KCMC大学(タンザニア)の教員でもある。ダルエスサラーム大学(タンザニア)で分子生物学と生物工学を学び、ラドバウド大学(オランダ・ナイメーヘン)で分子免疫学の博士号を取得した。ヒト機能ゲノミクスプロジェクトのポスドクとして、タンザニア初のマルチオミクス・システム免疫学研究で中心的役割を果たし、アフリカの伝統食が全身性炎症を低減し得るという画期的な証拠を示した。現在は、食事・微生物叢・免疫の相互作用が慢性炎症性疾患の駆動因子として果たす役割を調べており、文化的な背景に根差した食品に基づく予防戦略の開発を目指している。

今、この時期にこのプロジェクトに取り組む意義は?

世界の公衆衛生戦略について語るとき、「世界的」という言葉は、多様性を含め、世界全体をカバーするものでなければなりません。ところが、遺伝、生活様式、疾病状態の関連性を調べる既存の研究プロジェクトの多くは、主に欧米、とりわけ欧州の集団に由来するデータに基づいています。真に包括的なグローバルヘルス戦略に貢献するためには、アフリカ人集団で十分な研究が実施されることが不可欠です。数年前、私は、タンザニアで最初の機能ゲノミクスプロジェクトを実施する中心チームの一員として、免疫に対する遺伝的要因やその他の影響を調査しました。この経験が、現在の私の研究につながっています。そのプロジェクトは、ラドバウド大学医療センター(オランダ)やボン大学(ドイツ)などとの国際共同研究でした。この研究により、タンザニア人集団において、食事が免疫応答や慢性炎症性疾患の主要な駆動因子であることが明らかになりました1。今回のGGGHプロジェクトでは、こうした知見をさらに掘り下げる予定です。

GGGHプロジェクトの概要は?

世界は急速に変化しています。都市は拡大し、人々は農村部から都市部へと移動しています。その結果、人々の行動、生活様式、食事が変わりつつあります。高脂肪・高糖質の加工食品を含む西洋型の食物が、アフリカの都市部で急速に普及しているのです。こうした変化は、慢性炎症性疾患や、リーキーガット(腸内の物質が血流へ漏れ出す状態)のような腸の健康問題の増加と関連があることが、さまざまな文献で示されています。私たちは以前の研究で、食物繊維を豊富に含み、糖質が少なく、植物性食品を主体とした伝統的なタンザニア食を主に摂取している人々は、免疫系が良好に調節されていて、強力な抗炎症プロファイルを持っていることを明らかにしました2。これは、伝統食の成分が腸と免疫の健康を支えていて、西洋化した食事へと移行した場合に、そうした保護的要素の一部が失われる可能性を示唆しています。私たちは、食事が変わったとき、特に、腸管バリアが弱まって破綻し、有害な代謝物や微生物が循環血中に入り込んだ場合に、体内で何が起こるのかを知りたいと思っています。どのような食事パターンや腸内微生物パターンが腸管上皮の完全性に影響するのかはまだ分かっていません。これを探るため、既存のオミクスデータに加え、農村部と都市部のタンザニアの人々を比較した過去の大規模横断コホートと、参加者に2週間の食事の切り替えを依頼した小規模対照試験から得られる腸管バリアの完全性のバイオマーカーのデータを用いる予定です。

果物、野菜、豆類を豊富に含むアフリカの伝統的食事が、腸管バリアの損傷を防ぐ上で役立つ可能性がある。Credit: ICHAUVEL/Moment/Getty

2つのコホートから得られる知見とは?

大規模コホートは、腸内微生物叢の機能や腸管バリアの完全性と関連を示す食事パターンの全体像、いわばスナップショットをもたらします。つまり、相関関係が分かるのです。これに対し、小規模コホートは、因果関係を確立し、作用機序を特定する上で役立ちます。都市居住者には農村型の食事へ、農村居住者には都市型の食事へと切り替えてもらう2週間の食事介入研究を通して、腸内の変化を直接観察します。タンザニア農村部の伝統食は、豆類や野菜など、植物性食品が非常に豊富です。そうした食事から、全く異なる高脂肪・高糖質食に2週間切り替えるだけで、参加者の炎症マーカーに顕著な変化が表れました。腸内微生物叢は動的で非常に感受性が高く、その構成は食物摂取に応じて急速に変化し、腸内で産生される代謝物などに影響を及ぼします。私たちは今回、独立した3つのバイオマーカーを用いて、結果として生じる腸管バリアの完全性の変化を調べます。腸管バリアの完全性、食事、およびその他のオミクスシグネチャーを組み合わせることで、食事によって駆動される腸内生態系の変化の動態と機構を解析できるはずです。また、腸管バリアの変化が、特定の食事への切り替えや特定の食品の排除によって元に戻せるかどうか、そして、腸管バリアの復元力を予測する主要な因子も明らかにしたいと考えています。

バイオマーカーから分かることは?

1つ目のバイオマーカーは、本来そこに存在しないはずの特定の細菌成分が血中に存在するかどうかを追跡するのに役立ち、腸管バリアに破綻が生じているかどうかが分かります。2つ目のマーカーは、腸管バリアを構成する細胞間結合の密着度を示すマーカーで、結合が緩んでいればリーキーガットの存在が示唆されます。3つ目は、血中で微生物に曝露されたことで引き起こされる免疫活性化を示すものです。体はネットワークとして機能しているため、遺伝、腸内微生物叢、炎症マーカー、食事由来の代謝物など、多層的なデータを統合する必要があります。私たちは、初期の研究でバイオインフォマティクスの専門知識を提供してくれたラドバウド大学医療センターとボン大学の国際共同研究者らと、引き続き緊密に協力していきます。

想定される実際的応用は?

私たちは、ここタンザニアの地域社会、さらには世界各地の類似した環境にある地域社会の健康を改善したいと考えています。既に炎症性疾患や腸の問題を抱える人々に対して、食事や細菌叢による介入を提供できるようになることを期待しています。また、一般の人々が、食事に起因する慢性的な健康問題を発症するのを防ぎたいと思っています。ここで鍵となるのが文化です。他の文化で行われた研究に基づく食事指導が存在している場合でも、それが自分たちの生活環境にそのまま適用できるわけではありません。公衆衛生キャンペーンや教育活動を裏付けるためには、自分たちの集団を対象として、詳細な解析と結果を得ることが重要です。私たちは、自分たちの市場にある自分たちの食べ物に目を向け、スワヒリ語で明確な情報を提供しなければなりません。そうすることで、助言の受容と実践の割合がはるかに高まるのです。

今後の研究計画は?

腸だけでなく全身の炎症に対して保護的に働く食事パターンを特定できれば、異なる病態を持つ人々の集団を対象に、いくつかの食事介入試験を実施したいと考えています。具体例として、結核からの回復過程にある患者を支援するために腸–肺軸を標的とする方法については既に検討を進めています。こうした患者では、体内の炎症レベルが高く、その結果、肺に損傷を負っていることが多いのです。私たちは、彼らに特定の抗炎症食を提供し、結核後肺損傷を改善し、回復の可能性を高められるかどうかを検証することを提案しています。

参考文献
1. Temba, G. S. et al. Nat. Immunol. 22, 287–300 (2021).
2. Temba, G. S. et al. Nat. Med. 31, 1698–1711 (2025).

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2024年助成者インタビュー「腸内細菌叢のその先へ」

スポンサーの影響を受けない当審査委員会は、ヒト微生物叢の分野で国際的に高名な世界各地出身の研究者によって構成されている。

カレン・P・スコット

カレン・P・スコット 審査委員長

アバディーン大学 ロウェット研究所(英国)

アミ・バット

アミ・バット 副審査委員長

スタンフォード大学医学科(血液学・BMT)・遺伝学科(米国)

サラ・レビール

サラ・レビール

アントワープ大学生物科学工学科(ベルギー)

竹田 潔

竹田 潔

大阪大学大学院 医学系研究科(日本)

Gabriela Vinderola

ガブリエラ・ヴィンデローラ

リトラル国立大学(アルゼンチン・サンタフェ)
生物工学・食品技術部門、および酪農製品研究所

ジグイ・チェン

ジグイ・チェン

香港中文大学微生物学部門(中国)

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