注目の論文

アフリカの湿潤サバンナで農業を行うためのコスト

Nature Climate Change

2015年3月17日

Counting the cost of farming Africa’s ‘wet savannahs’

世界の食物とバイオエネルギーに対する需要を満たすためにアフリカの湿潤サバンナで農業を行うと、炭素と生物多様性の点で高いコストを負う可能性のあることを明らかにした論文が今週のオンライン版に掲載される。かつて、アフリカの湿潤サバンナを耕地に転換した場合には環境に与える影響が比較的小さいとする研究報告があったが、これと両立しない知見が今回の研究で得られた。

過去の研究の一例として、国連食糧農業機関の研究報告では、アフリカのサバンナと灌木地が耕地拡大のための候補地であることがほのめかされていた。しかし、土地の用途転換が炭素排出量と生物多様性に与える影響については十分に解明されていない。

今回、Timothy Searchingerたちは、広範にわたる「適切な」(農業にとって十分な土壌水分のある)アフリカのサバンナ、灌木地、森林地帯で農業を営むことに伴う炭素と生物多様性のコストに関するモデル研究を行った。その結果、これらの陸地のうち、高い炭素コストを負わずに高収量の耕地に転換できるものの割合は、トウモロコシを栽培する場合には2~3%、ダイズを栽培する場合には10%という少ない割合であることが分かった。また、ヨーロッパの温室効果ガス排出削減基準に適合したバイオ燃料を生産できる土地は1%未満だった。またSearchingerたちは、今回の研究で対象となった地域における鳥類と哺乳類の平均多様性が熱帯雨林の場合に似ていることも見いだした。今回の研究は、生物多様性の保全と二酸化炭素排出量の抑制を目指す政策立案者が、バイオ燃料と食物の生産量の大幅増加のためにアフリカの湿潤サバンナを選んではならないことを示唆している。

doi: 10.1038/nclimate2584

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