【海洋学】サンゴ礁は沿岸地域を暴風雨から守る
Nature Communications
2014年5月14日
Oceanography: Great barrier relief from storms
サンゴ礁が、世界の多くの地域で、人工の沿岸防護施設に代わるコスト効果の高い防御手段となる可能性があるという見解を明らかにした論文が掲載される。この新知見は、沿岸地域に居住する約2億人が、サンゴ礁によってリスク低減の恩恵を受けられる可能性があり、もしサンゴ礁の喪失や劣化が起これば費用の負担を迫られる恐れのあることを示唆している。
海水準の上昇と暴風雨による氾濫と洪水に伴う社会的、生態的、経済的損失は、気候変動の悪化と共に増大することが予想されている。現在、沿岸部の危険管理に巨額の投資が行われており、防波堤の費用だけでも2100年までに年額120~710億米ドル(約1兆2000億~7兆1000億円)に増えることが予想されている。こうした財政的負担の軽減に役立つ、コスト効果の高い、自然に基づいた解決策が必要なことについては幅広い合意がある。
今回、Michael Beckたちは、自然の沿岸防護の一形態としてのサンゴ礁が果たし得る役割と有効性を評価した。Beckたちは、過去に世界で公表された記録の統合と解析を行って、海岸線に影響を及ぼす波のエネルギーを最大97%散逸させられることを明らかにした。そして、サンゴ礁による波浪減衰効果が、低天端防波堤のような人工構造物と同等かそれ以上であり、熱帯環境中での費用を有意に削減できることも判明した。ただし、サンゴ礁の回復は、比較的新しい分野で、解明されていない事柄が多い点をBeckたちは警告している。
そして、Beckたちは、サンゴ礁が、海水準の上昇と暴風雨の増加によるリスクに直面する数百万人の人々にとっての防御の最前線であるが、世界規模の行動が行われない限り、この貴重な防御方法が、サンゴ礁の採取と沿岸地域の開発による脅威の増大によって崩壊する可能性があると結論づけている。
doi: 10.1038/ncomms4794
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