惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在する
Nature
2025年9月11日
Planetary science: A long fluid history for near-Earth asteroid Ryugu’s parent
地球近傍小惑星「リュウグウ(Ryugu)」の母天体内部では、形成後10億年以上経過した時期に流体が流れていたかもしれないことを報告する論文が、Nature に掲載される。この発見は、炭素質小惑星(carbonaceous asteroids)として知られるこうした天体が、従来考えられていたよりも2~3倍多くの水を保持していた可能性を示唆している。炭素質小惑星における流体の歴史を理解することは、地球型惑星における水の起源に示唆を与えるかもしれないため、重要である。
炭素と水を豊富に含む炭素質小惑星は、太陽系の小惑星帯外縁部で最も一般的な天体である。これらは太陽系外縁部の塵や氷から形成されたと考えられており、地球型惑星へ水やその他の物質を供給した可能性がある。こうした小惑星における水活動性の理解は、その進化過程の解明につながる。リュウグウを含む炭素質小惑星の分析では、親天体形成後数百万年以内の流体―岩石相互作用が確認されているものの、より長期的な水の歴史についてはほとんど解明されていなかった。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2(Hayabusa2)」は、2019年、地球近傍の炭素質小惑星リュウグウから試料を採取した。飯塚 毅ら(東京大学)は、これらの試料の分析により後期の流体流動の証拠が得られたと報告している。著者らは、ルテチウム176からハフニウム176への崩壊(176Lu–176Hf)を記録した同位体データを提示した。このシステムは、岩石年代測定に用いられるが、本研究ではリュウグウの親天体における水系流体流動の時期を特定するために応用された。ハフニウム176の明らかな過剰が検出され、これは親天体形成後10億年以上経過した時期に流体によってルテチウムが運ばれたことを示唆している。著者らは、このような遅い時期の流体流動は、熱を発生させ、氷を融解させ、流体の流れを可能にする岩石の割れ目を開いた衝突によって引き起こされたかもしれないと提案している。これらの知見は、炭素質小惑星が従来考えられていたよりも2~3倍多くの水を地球型惑星に供給する可能性があったことを示唆していると著者らは結論づけている。
- Article
- Published: 10 September 2025
Iizuka, T., Shibuya, T., Hayakawa, T. et al. Late fluid flow in a primitive asteroid revealed by Lu–Hf isotopes in Ryugu. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09483-0
doi: 10.1038/s41586-025-09483-0
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