惑星科学:月のグランドキャニオンの形成
Nature Communications
2025年2月5日
Planetary science: Formation of Grand Canyons on the Moon
月の2つの巨大な峡谷は、衝突した岩石の流れによって10分以内に形成されたことを示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。これらの分析は、今後の宇宙ミッションにおいて重要な意味を持つ月の領域について、さらなる洞察を提供している。
推定年齢38億1,000万年のシュレディンガー衝突盆地(Schrödinger impact basin)は、直径2,400キロメートルの月の南極エイトケン盆地(South Pole–Aitken basin)の外縁部に位置している。シュレディンガー盆地は、衝突時に放出された岩石破片(放出物)の筋によって形成された峡谷や渓谷に囲まれている。このような峡谷には、シュレディンガー峡谷(Vallis Schrödinger)とプランク峡谷(Vallis Planck)がある。これらの峡谷は、それぞれ長さ270キロメートル、深さ2.7キロメートルおよび長さ280キロメートル、深さ3.5キロメートルであり、北米のグランドキャニオンに匹敵する大きさである。しかし、その形成過程については、これまで不明であった。
David Kring、Danielle KallenbornとGareth Collinsは、月の表面の写真を基に地図を作成し、峡谷形成時の衝突で放出された破片の流れる方向と速度を計算した。これらのデータは、放出流がどのように形成されたかをモデル化するために使用された。著者らは、放出物が秒速0.95–1.28キロメートルで移動したことにより、10分以内に月の地殻が削り取られ、壮大な峡谷が形成されたと提案している。著者らは、これらの峡谷を形成するために必要なエネルギーは、現在の世界的な核兵器の保有量の130倍以上であったと計算している。この研究では、掘り起こされた破片の大部分は対称的に飛び散るのではなく、非対称的に極から離れた方向に分布したことが示唆されている。シュレディンガー衝突盆地は、今後実施されるアルテミス計画(Artemis mission)の探査ゾーンの近くにある。そのため、この発見は将来の月面ミッションに影響を及ぼす可能性があり、潜在的な着陸地点の組成に関する洞察を提供している。
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- Published: 04 February 2025
Kring, D.A., Kallenborn, D.P. & Collins, G.S. Grand canyons on the Moon. Nat Commun 16, 1146 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-024-55675-z
doi: 10.1038/s41467-024-55675-z
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