進化:ラオスで見つかった更新世中期のヒト族の臼歯
Nature Communications
2022年5月18日
Evolution: A middle Pleistocene hominin molar from Laos
ラオスのタム・グ・ハオ2洞窟で発見された更新世中期のヒト族のものとされる臼歯の標本について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この臼歯は、若いデニソワ人女性のものである可能性が指摘されており、東南アジアの人類集団史に関する私たちの理解を助けるかもしれない。
東南アジアの大陸部にヒト族が存在していたという理解は、主として限定的な石器記録とわずかな数のヒトの遺骸に基づいている。南アジアに1つ以上のヒト系統が存在していたかどうかは、分かっていない。東南アジアの集団の一部にデニソワ人の系統が残っていることが遺伝的解析によって示唆されているが、デニソワ人の地理的分布域については、いまだに活発に議論されている。
今回、Fabrice Demeter、Clément Zanolli、Laura Shackelfordたちは、ラオスのアンナン山脈にあるタム・グ・ハオ2(コブラ洞窟)という鍾乳洞で発見された臼歯について報告している。この洞窟からは、サイ、バク、サンバー(スイロク)などの動物の化石化した遺骸も出土した。今回の研究では、一連の年代測定法を用いて、臼歯の化石の周囲の堆積物が16万4000~13万1000年前のものと推定された。著者たちは、この臼歯は摩耗しておらず、生え終わってからあまり日がたっていなかったことを指摘し、この臼歯の持ち主は、死亡時の年齢が3.5~8.5歳だったと示唆している。この臼歯については、形態解析と共にエナメル質のタンパク質の解析も行われ、ヒト属個体の臼歯であることが示唆され、女性だったという見解が示された。また、幾何学的形態計測(三次元形状統計)を用いて、この臼歯の内部形態と外部形態を他のヒト族(ネアンデルタール人、現生人類、ホモ・エレクトス)と比較した結果、デニソワ人の臼歯である可能性が極めて高いことが示唆された。
著者たちは、今回の臼歯がネアンデルタール人のものである可能性を排除できないとしつつ、中国の夏河(シアホー)で出土したデニソワ人の標本の臼歯と類似していることが、自分たちの見解を裏付けているという見解を示している。著者たちは、この臼歯は、アジアにおけるヒト族の分散に関する理解を深め、アジアがヒト属のホットスポットであったことを実証していると結論付けている。
doi: 10.1038/s41467-022-29923-z
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