注目の論文

進化:恐竜時代が終わったのは北半球の春だった

Nature

2022年2月24日

Evolution: The end of the dinosaur era pinpointed in spring

恐竜の時代だった中生代を終わらせたチクシュルーブ小惑星の衝突は、北半球の春に起こったことを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、その後に起こった絶滅のパターンを説明するために役立ち、地球の歴史におけるこの極めて重要な瞬間の理解を深めるものとなる。

今から約6600万年前、現在のメキシコのユカタン半島に大型の小惑星が衝突し、全生物種の76%(非鳥類型恐竜、翼竜類、アンモナイト類を含む)が死滅する大量絶滅事象が起こった。この事象の時期を調べたこれまでの研究では、1000年の時間スケールに焦点が当てられていたため、どの季節に小惑星の衝突があったのかは分かっていない。今回、Melanie Duringたちは、この問題を解決するために、小惑星の衝突があった日に大量に死滅した濾過摂食魚(チョウザメ類とヘラチョウザメ類)の遺骸を調べた。これらの魚類の化石骨は保存状態が良好で、その内部には独特な三次元成長パターンが観察され、季節変化の記録が得られた。この観察結果は、炭素同位体データと組み合わせると、これらの魚類が北半球の春に死んだことを示唆している。

これらの濾過摂食魚の遺骸は、米国ノースダコタ州の後期白亜紀の堆積層で発見された。これらの魚の鰓には、小惑星の衝突による残骸が詰まっていたが、これより下流の消化器系からは見つからなかった。これは、小惑星の衝突によって引き起こされた静振(湖沼などの水面が衝突によって振動すること)によって河川が突然増水し、これらの魚がほぼ瞬時に死滅したことを示唆している。この壊滅的な天体衝突は、春に繁殖して子孫を残した多くの北半球の生物種が特に影響を受けやすい時期と重なったと考えられる。Duringたちは、南半球の生態系にとって天体衝突が起こったのは秋であり、その回復の速さは、北半球の生態系の最大2倍に達したと考えられると指摘している。

doi: 10.1038/s41586-022-04446-1

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