微生物学:微生物が海底下で生き残る上でカギとなるのは代謝能力
Nature Communications
2022年1月26日
Microbiology: Metabolism key to microbial survival under the seafloor
温度が最高120℃に達する海底下1キロメートル以上の堆積層で微生物群集が生き残れるのは、エネルギー代謝速度が高いためだと考えられるとした論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、生物にとっての上限とされる温度で生活している生物の生存戦略の解明に役立つ。
地表下の海洋堆積物には、地球上に生息する微生物が大量に含まれていると考えられている。以前の調査では、南海トラフの沈み込み帯から堆積物コアを回収して、そこを生息地とする生物の範囲を調べた。この調査地点では、最深部の堆積物の温度が120℃に達するにもかかわらず、小規模な微生物群集が繁栄していることが分かった。しかし、これらの微生物が生き残れるように適応した過程は明らかになっていない。
今回、Tina Treudeたちは、これまでの研究を基にして、高無菌作業条件下で高感度放射性トレーサー実験を行い、微生物が堆積物中でどのように生き残ってきたのかを調べた。その結果、深海底の高温の堆積層に生息する微生物は、エネルギー代謝速度が極めて高いことが判明した。この結果は、深海底で生息する微生物の生活がゆっくりであるという以前の観察結果とは極めて対照的だ。Treudeたちは、極端な環境の微生物群集は、熱による細胞損傷を修復するために必要なエネルギーを供給するために高い代謝速度を維持しなければならないが、堆積物中の有機物の加熱によって供給される豊富な栄養素に支えられているという仮説を提起している。
Treudeたちは、今回の知見が、地表下の堆積環境と生物にとっての上限温度に関する学説の理解に影響を及ぼすという考えを示している。
doi: 10.1038/s41467-021-27802-7
注目の論文
-
10月1日
考古学:岩絵は古代アラビア砂漠で繁栄する人類を描いているNature Communications
-
9月26日
生態学:世界大戦時の沈没残骸が野生生物の生息地となっているCommunications Earth & Environment
-
9月25日
生態学:米国河川における魚類の生物多様性の変化Nature
-
9月25日
地質学:サントリーニ島で最近発生した地震は共通のマグマによって説明できるかもしれないNature
-
9月24日
古生物学:新種の肉食恐竜が白亜紀後期のアルゼンチンを支配していたNature Communications
-
9月24日
気候変動:2100年までに世界的に深刻な水不足が発生するかもしれないNature Communications