天文学:持ち帰られたリュウグウの試料の初見
Nature Astronomy
2021年12月21日
Astronomy: First look at Ryugu sample
炭素に富んだ小惑星リュウグウから地球に持ち帰られた最初の物質の分析結果について報告する2報の論文が、Nature Astronomy に掲載される。炭素に富んだ小惑星は、太陽系初期の歴史や、生命体の構成要素である有機物や含水鉱物の形成についての手掛かりをもたらす。
リュウグウは炭素に富んだ、ダイヤモンド型をした地球近傍小惑星で、直径はおよそ1キロメートルである。2020年12月、リュウグウの表面から採取された5.4グラムの物質が探査機はやぶさ2によって地球に持ち帰られた。
今回、宇宙航空研究開発機構の矢田達(やだ・とおる)たちは、リュウグウの試料を分析した2本の論文のうちの1つ目の論文で、この試料は非常に暗く(小惑星に当たった光のわずか2%しか反射しない)、その空隙率は46%であり、これまで研究されてきたどの小惑星よりも高いことを明らかにした。また、もう1つの論文では、Cédric Pilorgetたちが、可視光と赤外光の異なるスペクトル波長で画像を取得できる顕微鏡を用いて、試料の組成を決定した。その結果、この試料が、さまざまな有機物が埋め込まれた粘土のような水和組成物からなることが明らかになった。しかし、炭酸塩や揮発性化合物などの異なる物質で構成されている部分もあった。
これらの発見は、リュウグウの試料の微視的な不均質組成を明らかにするとともに、はやぶさ2によって行われたin situでの観測を支持し、リュウグウが巨視的には均一な構造と組成であり、炭素質コンドライト隕石に似ているが、より暗く、より多孔質で壊れやすいことを示唆している。著者たちは、この試料の成分が、現在までに実験室で利用できた最も始原的な物質の1つであり、太陽系の起源と進化を研究するための唯一の収集物であると同時に、将来的な惑星からの試料回収のモデルを示すものであると結論付けている。
doi: 10.1038/s41550-021-01550-6
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