考古学:X線画像で明らかになった古代の動物のミイラに関する新事実
Scientific Reports
2020年8月21日
Archaeology: X-ray imaging provides unique snapshot of ancient animal mummification
高度な3次元X線画像撮影法を使って、古代エジプトの3種類の動物(ネコ、鳥、ヘビ)のミイラを分析した結果を記述した論文が、Scientific Reports に掲載される。この手法を用いれば、標本を損傷することなく、これらの動物のミイラの保存状態、複雑なミイラ製作過程、考え得る死因を明らかにするための手掛かりが得られる。
今回、Richard Johnstonたちの研究チームは、非侵襲的なX線マイクロコンピューター断層撮影(CT)法を用いて、ネコのミイラの頭蓋骨が、外側を覆う包みのほぼ半分のサイズであることを明らかにした。その形態から、このミイラは、エジプトのイエネコの一種である可能性の高いことが示唆された。また、歯と骨格の画像の解析からは、このネコが生後5か月未満であり、死亡時あるいはミイラ製作過程で頭部を直立位置に保つために、首の骨を意図的に折られた可能性のあることが示された。
猛禽類のミイラについては、3次元スキャンを用いた測定結果から、チョウゲンボウ(Falco tinnunculus)に非常によく似ており、頸部の損傷が死因とは考えにくいことが示唆された。固くとぐろを巻いたヘビのミイラについては、画像解析から、コブラの幼体であり、脊椎骨折が死因だった可能性があることが示唆された。これは、尾をつかんでむちのよう打ちつける方法が、当時ヘビを殺すために一般的に用いられていたことと符合する。今回、Johnstonたちが高分解能の画像化技術を用いたことで、このヘビのミイラの口内で見つかった構造体が硬化樹脂であることと、その声門開口部における正確な位置が判明した。このことは、「口開けの儀式」に似た複雑な儀式的行動があったことの証拠となる可能性がある。
研究用の画像化技術によって動物のミイラの製作に関する理解が深まれば、今後の保存作業にとって貴重な情報が得られ、過去の人間と動物の関係をさらに解明できるかもしれない。
doi: 10.1038/s41598-020-69726-0
注目の論文
-
11月28日
古生物学:糞便の科学捜査が恐竜の台頭を記録するNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが月の裏側の火山活動の年代を特定Nature