巨大隕石衝突は火星では初期に終わっていた
Nature Geoscience
2019年6月25日
Giant impacts ended early on Mars
生命を抑止するような巨大な隕石の衝突は、火星では44億8000万年前までに終了したことを報告する論文が、今週掲載される。今回の知見から、火星で生命が発生し得る条件は、42億~35億年前に出現した可能性があることが示唆される。
火星と地球への隕石衝突の回数と規模は、惑星の形成後に徐々に減少した。最終的に、隕石衝突は十分に小さく、少なくなったために、表面付近の条件が生命の発生を可能にした。しかし、激しい隕石の爆撃が減弱した時期については論争となっている。火星にも地球にも、約38億年前に終わった重爆撃期の「後期」が存在したのではないかと考えられている。
今回Desmond Moserたちは、火星南部高地由来と考えられている隕石から得た、知られている限り最古の鉱物粒子を分析した。その結果、粒子のほぼ全てで、衝突による変成はごくわずかであることが明らかになった。一方、地球と月の衝突地域で分析された粒子の80%以上は、高温や高圧への曝露といった、衝突に関連した特徴を持っていた。このことからMoserたちは、火星の重爆撃期は分析した鉱物が形成されるよりも前に終了したと示唆している。その結果、火星の表面は、水が豊富に存在していたと考えられている時期までに、生命が存在できる条件になったと考えられる。
Moserたちは、火星の初期に巨大隕石衝突が終了していたならば、地球も後期重爆撃期を経験しておらず、地球で生命が存在できる条件はこれまで考えられていたより早い時期に生じた可能性があることを示唆している。
doi: 10.1038/s41561-019-0380-0
注目の論文
-
12月17日
遺伝学:古代アンデス人は失われたラクダ科動物の系統を狩猟し、飼育していたNature Communications
-
12月16日
気候変動:氷河の消失は21世紀半ばにピークに達すると予測されるNature Climate Change
-
12月12日
海洋生態学:シャチはイルカを追跡してサケを狩るScientific Reports
-
12月11日
考古学:意図的な火起こしの初期の証拠Nature
-
12月10日
考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠Nature Communications
-
12月9日
Nature's 10:2025年の科学に影響を与えた10人Nature
