【環境】モンテレー湾の深海におけるマイクロプラスチックの分布
Scientific Reports
2019年6月7日
Environment: Deep-sea microplastics distribution in Monterey Bay examined
海洋性マイクロプラスチックの蓄積量が世界最大級だが、過小評価されている海域が、外洋域の深海に存在していると考えられることを、米国カリフォルニア州モンテレー湾の研究から明らかにした論文が、今週掲載される。
今回、C. Anela Choyたちの研究グループは、遠隔操作の探査機と専用の試料採取装置を用いて、カリフォルニア州沖のモンテレー湾地域でマイクロプラスチックを収集し、その分布を調査した。Choyたちは水深5~1000 メートルから2万6239リットルの海水試料を採取した他、マイクロプラスチックと同じ大きさの粒子を直接摂食するコシオレガニと巨大なオタマボヤ綱動物の2種も採取した。
調査の結果、使い捨てのペットボトルや包装容器に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)が、全ての採取水深の水柱試料のみならず、コシオレガニの消化管やオタマボヤ綱動物から排出された粘膜のメッシュフィルターにも最も多く含まれるプラスチックであることが分かった。オタマボヤ綱動物の粘膜のメッシュフィルターはシンカー(sinker)と呼ばれ、摂食後に排出されて海底に沈殿する。今回得られた知見は、オタマボヤ綱動物のシンカーが、マイクロプラスチックを浅瀬から海底へ輸送する媒介体として機能していることを示唆している。また、有光層の底部で、マイクロプラスチックの濃度が最大となり、プラスチックの種類が最も多様だったことも明らかになった。
以上の知見は、マイクロプラスチック汚染が、以前に考えられていたよりもはるかに広範囲に及び、深海の水域、堆積物、動物群集に達していることを示唆している。Choyたちは、この問題の空間的スケールと生態学的スケールを評価するには、大規模な保全と気候変動緩和の取り組みが必要だとしている。
doi: 10.1038/s41598-019-44117-2
注目の論文
-
10月15日
惑星科学:火星における氷と炎の物語Nature Communications
-
10月8日
材料科学:通常のプラスチックと同等の強度を持つ生分解性の竹プラスチックNature Communications
-
10月7日
材料:海洋から回収した炭素を生分解性プラスチックに変換Nature Catalysis
-
10月1日
考古学:岩絵は古代アラビア砂漠で繁栄する人類を描いているNature Communications
-
9月26日
生態学:世界大戦時の沈没残骸が野生生物の生息地となっているCommunications Earth & Environment
-
9月25日
生態学:米国河川における魚類の生物多様性の変化Nature