注目の論文

巨大キノコをかくも巨大ならしめている遺伝子

Nature Ecology & Evolution

2017年10月31日

Genes that let the humongous fungus get so humongous

地球最大の陸上生物や世界中で最大級の被害をもたらしている森林病原体を含むArmillaria(ナラタケ属)真菌類4種のゲノムについての報告が、今週掲載される。この研究は、その真菌類が広がって植物体内に侵入する仕組みの遺伝的基盤に関する洞察をもたらし、森林で生じる被害を抑える戦略を編み出すための価値あるリソースとなる。

Armillariaは、世界各地の森林や公園で500種を超える植物に生える病原性真菌類である。この真菌類は、宿主の根を枯死させると、根の組織を分解して根腐れ病を引き起こす。Armillariaは、感染植物体の周囲に大きな塊状の子実体(ナラタケ)を生じるとともに、根状菌糸束と呼ばれる探査用の器官も形成する。これは太さ1~4 mmの繊維で、新たな根を求めて地下で伸長する。この根状菌糸束は巨大化する場合があり、「humongous fungus(巨大キノコ)」として知られるあるArmillariaの個体は、地球上で最大級の陸上生物であり、その広さは965ヘクタール、重さは544トンにも及ぶ。

Gyorgyo Siposたちは、Armillaria属の4種(A. ostoyae、A. cepistipes、A. gallica、およびA. solidipes)のゲノム塩基配列を明らかにした。そのArmillariaゲノムを近縁の真菌類22種と比較した結果、Armillaria種は、複数の病原性関連遺伝子および植物組織分解酵素に関係する遺伝子ファミリーが増幅されていることが分かった。また、根状菌糸束に関して、その広がりおよび新たな植物体での増殖という役割に関係するさまざまな遺伝子も同定された。根状菌糸束および子実体の両者では、複雑な多細胞性と関係する遺伝子の発現が類似しており、研究チームは、それがその2つの構造体に共通の発生的起源を示す証拠であることを示唆している。

この研究は、Armillariaの広がりを抑えて根腐れ病と闘う戦略を編み出すための基盤を提供するものである。

doi: 10.1038/s41559-017-0347-8

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