【気候科学】世界の平均気温上昇が2℃を大きく下回るようにするために必要なテコ入れ
Nature
2016年6月30日
Climate science: Boost needed to keep global warming well below 2 °C
2020年以降の気候変動に取り組むための各国の国家計画が、2015年12月のパリ協定の作成準備のために提出されているが、これらの国家計画は、世界の平均気温がパリ協定に定める限度を大きく超えて上昇することを暗示している。今週掲載されるPerspective論文の著者は、産業革命前からの世界の平均気温上昇が摂氏2度を大きく下回る相当程度の見込みを確保するには大掛かりな活動が必要だという考えを示している。
各国が自主的に決定する約束草案(INDC)には、世界の平均気温上昇を摂氏2度未満に抑え、さらに摂氏1.5度未満に抑えるための選択肢を追求するという国際的目標を達成するための各国の温室効果ガス排出削減計画が記述されている。
この論文で、Niklas Hohneたちは、現在のINDCの温室効果ガス排出に対する意義を評価し、2100年に世界の平均気温が摂氏2.6~3.1度上昇することがINDCにおいて暗示されているという見解を示している。これは、現在の各シナリオと何らの政策も実施されないシナリオと比較すれば改善ではあるが、摂氏2度という目標を大きく上回ってしまっている。また、Hohneたちは、2030年以降に排出削減を加速させたとしても、現在のINDCによって摂氏2度という目標を達成する余地は極めて限られていることを明らかにしている。しかし、パリ協定では5年ごとにもっと大掛かりな新しいINDCを提出することを各国に義務付けているため、今後10年間に排出量削減が加速し、国家と非国家的主体(企業と国民)による活動の勢いが続けば、世界の平均気温上昇が摂氏2度を大きく下回るように保つことは今も可能だとHohneたちは結論づけている。
doi: 10.1038/nature18307
注目の論文
-
11月28日
古生物学:糞便の科学捜査が恐竜の台頭を記録するNature
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが月の裏側の火山活動の年代を特定Nature