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発がん性ヒトパピローマウイルス感染症

Nature Reviews Disease Primers

2016年12月1日

Carcinogenic human papillomavirus infection

発がん性ヒトパピローマウイルス感染症
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ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症はよく見られる疾患で直接接触により伝染する。ほとんどの場合、HPVによる感染症は2年以内に治癒するが、系統発生的に関連のある13の遺伝子型のHPVは性感染性のウイルスで、これらのHPV、とりわけHPV16に感染すると、免疫学的に、あるいはスクリーニングによって制御されない限りがんが発生することがあり、世界の全ての子宮頸がんだけでなく、他のほとんどの肛門性器がんや最近増加している口腔咽頭がんの原因になっている。このような型のHPVの発がん性は、主に、増殖調節経路を障害するがんタンパク質E6およびE7の活性に起因する。高リスク型HPVの持続感染では、ビリオンが産生される増殖感染から不稔感染または形質転換感染に移行することがあり、移行後、通常認められる程度の速度で宿主の遺伝子変異が蓄積してがんが発生する。しかし、がんに進行する前がん性病変とそうでない病変を区別することは容易ではないことから、スクリーニングで検出された前がん病変のほとんどが治療の対象となっているため、過剰治療が起きている。HPVの発がん性の発見を契機に、効果的な予防ワクチンおよび感受性HPV DNAおよびRNA検査の開発が進められている。ワクチン接種プログラムは究極の長期予防戦略ともいえ、HPV検査によるスクリーニングとともに、HPV関連がんを取り巻く環境を劇的に変える可能性がある。HPV検査の結果が陰性であっても、細胞診ベースの子宮頸部スクリーニングを追加することで、検査結果がより確かなものになる。しかし、HPV予防接種とスクリーニングの効果的な実施には、今も課題が残されている。

PrimeView
このPrimeViewでは、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を取り上げ、特定のHPV病変のがんリスクを予測するのに必要な、信頼性の高い検査と戦略について解説する。
本Primerの図解サマリー

doi: 10.1038/nrdp.2016.86

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