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関節リウマチ:RA治療にリツキシマブをいつ使用すべきか?

Nature Reviews Rheumatology

2011年5月31日

Rheumatoid arthritis When should we use rituximab to treat RA?

関節リウマチ治療は最近の15年間で急速な進歩を遂げ、臨床医には多くの選択肢が与えられているが、最適な使用における有効性が確認されたガイドラインはほとんどない。リツキシマブの使用に関する新たな勧告は、診療にどのような影響を及ぼすのであろうか。

過去15年間の関節リウマチ(RA)治療法をみると、3つの大きな変化が知られている。これらの新しいアプローチを重要性の順に並べれば、発症後の極力早期でのメ トトレキサートの使用、積極的治療の目標を定めてその達成をモニタリングする疾患評価ツールの使用、治療方法への生物学的製剤の追加、を含んでいる。Buch ら2は、生物学的製剤の一つであるリツキシマブの最適な治療方法を明らかにするためにデザインした研究を実施し、RA患者への使用について合意声明を発表した。

新しい治療法が利用できるにもかかわらず、過去の研究では、概してRA患者への併用治療の開始は真の利点をもたらさないと報告されている。患者の圧痛・腫脹関節数が20~30の場合、またはX線学的に破壊が既に認められる場合(恐らくまれである)には例外が適用されるが、一般的に、初回治療としてはメトトレキサートが処方されるべきであること(低用量プレドニゾンの併用の有無を問わない)が示されている。疾患評価ツールの1つおよびそれに伴う我々が自由に使えるスコア(DAS28、CDAI、RAPID3など)で、治療3~6ヵ月後にメトトレキサートに十分に反応しなかった症例については、反応改善のため生物学的製剤の追加を考慮すべきである。生物学的製剤が高価で負担しきれない 場合、または患者に禁忌の場合は、生物学的製剤の追加よりも従来の非生物学的DMARDの併用に切り替える方が適切かもしれない。この時、「この患者が自分の母 親であればどのような治療を行うか」という基準を用いるのであるが、メトトレキサート単剤療法が失敗した後の最初の選択肢として、生物学的製剤を試してみること が私の診療のやり方である。なぜなら、全体的にみて、生物学的製剤の追加という選択肢は、従来のDMARDの併用よりも優れているように思えるからである。この 優位性は、しばしば見落とされる患者のコンプライアンスの領域にまで広がる5。有効性が確認されたガイドラインがなければ、今使える治療法を展開するためには どうするのがベストなのかについて、リウマチ専門医は全員が似たような判断を下していくことになる。そのため、Annals of the Rheumatic Diseases 誌に掲載された Buch ら2の発表は、RA患者でのリツキシマブ使用ついてタイムリーな最新報告といえる。様々なRA患者コホートでのリツキシマブ使用に関するデータは、詳細に検討 された上で、入手可能な情報に基づいた専門家委員会の勧告とあわせて提示されている。

いくつかの詳細な勧告や、一部のかなり強い結論(例えば、リツキシマブは血清反応陽性RAに最も有効である)があるものの、リツキシマブをRA治療に使用すべき時期の判断には様々な問題が残っている。最初の問題は、用量をどうすべきか、である。IMAGE試験6では、Buchらが考察するように、リツキシマブ500mgおよび1,000mgとメトトレキサートとの併用は、米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)、ACR50、ACR70により評価した反応に関して、実際に差がないことが示された。X線学的転帰にはリツキシマブ500mg投与患者と1,000mg投与患者の間で有意差が報告された。しかし、これは思っているほど決定的なデータではない。Total Sharpスコア(TSS)はメトトレキサート単剤療法で1.079、メトトレキサート+リツキシマブ500mg併用療法で0.646、メトトレキサート+リツキシマブ1,000mg併用療法で0.359であった。52週後には、併用療法の TSSはメトトレキサート単剤療法よりも有意に良好で、リツキシマブ1,000mgはリツキシマブ500mgよりも良好な反応を示した6。しかし、リツキシマブ1,000mgと 500mgの差は統計学的に有意であるが、TSSの変化量が0.1%未満であるため臨床的に重要ではなく、また実世界での患者の評価方法に影響を及ぼさないであろう と主張したい7。よって、メトトレキサートに十分な反応を示さない大多数の患者では、500mgをリツキシマブの開始用量とするよう推奨する。なぜなら、より高用量 が必要な患者を決定する良い方法はなく、2つの用量が似たような結果をもたらすと思われるためである。有害事象が少ないという点では、低用量を用いることは有用 であり、注入反応も少ないであろう。

注入反応に関しては、リツキシマブの使用に伴う問題として前投与の必要性が残っていると思われる。注入反応を避けるため高用量コルチコステロイドを使用する という勧告のある生物学的製剤は他にない。このような反応は初回注入後に生じることが多いが、その後の注入に伴い生じることはまれである。すべての条件が同じ として、なぜ患者はこのリスクのある生物学的製剤を選択し、さらに余分なコルチコステロイドを選択するのであろうか。患者が選択する薬剤となるためには、リツキ シマブの有効性プロファイルまたは安全性プロファイル(または両方)は他の生物学的療法よりも優れていなければならないと思われるが、これには当てはまらない。

次に、評価ツールにしても、反応するかどうかの判断のために推奨される観察期間の16週間は、日常のケアには長すぎる。所定用量のメトトレキサートまたは腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が有効な場合、または使用後3ヵ月以内に効果が出ない場合、ほとんどのリウマチ専門医には良い考えが浮かぶであろうし、反応が不十分な場合は治療の変更を開始するであろう。戦略を切り替えるまでしばらく待てば、最終結果に大きな差は生じないのであろうが、現代の早期・積極的治療戦略の時代にあっては待つだけの十分な理由はないと考える。

その他の問題は、血清反応陰性RA患者よりも、陽性RA患者の反応の方が一見良好そうに見えることである。リウマチ学の新しい傾向は、抗シトルリン化ペプチド抗 体(ACPA)の有無別にRA患者を分類することである。一部のエビデンスから、治療への反応や遺伝的危険因子もACPA陽性RA患者とACPA陰性RA患者で異なる可 能性が示唆される。しかし、このような差を記述した研究は(一人ひとりではなく)患者群を調べて報告する傾向があり、どの臨床医においても、結果が非常に思わ しくない血清反応陰性患者と最小限の治療によっても結果が非常によい陽性患者がいる。そのため、治療アプローチを変更することはない。すなわち、低用量プレド ニゾンと共に早期に積極的なメトトレキサート治療を行い、反応が不十分(RA患者の約50%で生じる)であれば、続いて生物学的製剤を追加するというアプローチを進 めるのである。この治療パラダイムでは、生物学的製剤を試す時期については、血清学的状態はリツキシマブ使用の決定に大きな差をもたらさないと考える。なぜな ら、我々は患者のために最善を尽くすためであり、治療がうまくいく見込みがあるのであれば、それを使用することになる。

著者らは妊娠、ワクチン接種、有害事象について利用可能なデータを十分に要約し、妥当な提言を行っている。特に無作為化比較試験が安全でないことを踏まえると、重篤な有害事象(日和見感染や悪性腫瘍など)について引き続き警戒することが重要なことは当然である。文献でよくみられる一つの問題は、「患者年」で安全性データが報告されていることである。このアプローチは重篤な有害事象の真のリスクを覆い隠してしまう可能性がある。著者らが重篤な感染はリツキシマブ治療初期に集中すると指摘していることは興味深い。原則として「ある事象がある薬剤の継続治療中のどの段階でも生じる可能性がある(またはそのように考えられている)ときにこそ、時間成分を伴う事象発現率(率/人年など)は真の意義をもつ」。そのため、「患者年」は安全性データの報告の際に用いるべきではない。なぜなら、この項目は関連する発現率比の分母を必要以上に 拡大させ、有害事象(生物学的製剤の試験について必要な最後の不確定要素)の過小評価につながる可能性があるためである。

それでは、これらを考慮し、我々はどうすべきであろうか。どの生物学的製剤がファーストライン候補になるのか。データに基づいて判断しようとすると、当然そう すべきであるが、TNF阻害薬の3種類であるエタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブとアバタセプト(T細胞活性化阻害薬)については同様の患者(メトトレキ サートまたは生物学的製剤への反応が不十分な患者、メトトレキサート治療歴のない早期RA患者)で同様のデータがあり、いずれもメトトレキサート投与後にファーストラインの生物学的製剤として使用できる。現在、リツキシマブについてはメトトレキサート治療歴のない早期RA患者で、許容できる有効性・安全性プロファイルを示す同様のデータがある2。しかし、長期データがないこと、反復投与時期が不確かなこと、高用量コルチコステロイドの前投与が必要であること、血清反応陰性患者(RA患者の35%を占める)における有効性に疑問が残ることはすべて、RA治療において、メトトレキサートと併用してリツキシマブを第一選択の生物学的製剤として用いることへの機会を減らすものかもしれない。

doi: 10.1038/nrrheum.2011.79

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