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治療:最初のTNF阻害薬治療が失敗したら次に何をすべきか

Nature Reviews Rheumatology

2009年11月1日

Therapy What should we do after the failure of a first anti-TNF?

Golimumabは、1剤以上のTNF阻害薬治療が失敗した活動性関節リウマチ患者の症状と徴候を効果的に軽減する。連続的な薬物投与戦略を開発する時期に来ているのであろうか。

Golimumabは腫瘍壊死因子(TNF)を標的とするヒトモノクローナル抗体である(4週毎に皮下投与)。本剤に注目した第III相多施設共同無作為化プラセボ対照試験であるGO-AFTER(golimumab after former anti-TNF therapy evaluated in rheumatoid arthritis[RA])研究が、効果不十分、薬剤不耐性または治療へのアクセスに伴う問題によって1剤以上のTNF阻害薬治療が失敗した活動性RA患者を対象に行われた。試験結果は最新号のLancet 誌1に発表されている。14週後に米国リウマチ学会の20%改善基準(ACR20)を満たした患者はプラセボ投与群で18%であったのに対し、golimumab 50mg投与群と100mg投与群でそれぞれ35%、38%であった。24週後の追跡調査時には、重篤な有害事象の発現率はプラセボ投与群よりも両用量のgolimumab投与群で低かったが、有意な群間差は認められなかった。

以上の結果から、2つの重要な疑問が浮かび上がった。現在3種類のTNF阻害薬(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ)がRA治療に利用できるが、他の薬剤も必要なのかということと、最初のTNF阻害薬に対する効果が不十分であった場合、次にどのような治療戦略をとるべきか、ということである。

最初の疑問については、GO-AFTER研究に付随したYazici2の論説やAnnals of Rheumatic Disease 誌6月号のScottとCope3の解説で取り上げられている。TNF阻害薬治 療の選択肢の広がりを支持する論拠の1つは、新規薬剤であれば、既存薬剤よりも効果が高く、忍容性が良好で、毒性は低くなり、結果的に費用対効果が高くなる可能性があるという点である3。各薬剤を直接比較した試験はないが、golimumabと現在認可されているTNF阻害薬の有効性の有意差を示唆するエビデンスはなく、各薬剤の有害作用(例えば、結核の素因4)発現率にもほとんど差がない。また、患者の20~30%は、治療開始以降TNF阻害薬に対する効果が不十分であるか(一次無効者)、または初回治療に十分 な効果を示したがその後は効果が不十分であった(二次無効者)。Golimumabはアダリムマブやエタネルセプト(認可されている皮下注用TNF阻害薬)よりも投与頻度が少なくてすむため、患者に好まれるであろう。

しかし、GO-AFTER研究は、1剤以上の生物学的製剤治療が失敗した後のTNF阻害薬治療を検討した初の無作為化対照試験であるため、連続的な生物学的製剤治療戦略に関する疑問のほうに、より大きな関心が寄せられている。この試験は、2回目のTNF阻害薬の有効性を示唆した観察研究の知見を確認すると同時に、観察データに関連するいくつかの問題を克服するものである。主要評価項目を満たす患者数に、プラセボ群と実薬群で統計的に有意な差はみられ、その差は最初の4週毎の評価時点で明らかであった。しかし、ACR20基準は、治療に対する主要な臨床反応を反映しないとの批判があるため、2群間の差が臨床上劇的な差ではないことには議論の余地があろう。さらに、本試験の患者の多くはこのエンドポイントに達することはなく、golimumab投与患者の25%は14週後の疾患活動性スコア(DAS28)が>5.1と依然高く、全体の平均スコアも4.7と高かった。実薬群で寛解(DAS28スコア<2.6 と定義)に達した患者は、わずか10%であった。

2回目のTNF阻害薬の有効性が過少評価された可能性を示唆する研究結果はあるのであろうか。過去に投与されたDMARDおよび/または生物学的製剤の数が増加するに伴い、TNF阻害薬に反応する確率は低下した1。GO-AFTER研究の患者は、過去の生物学的製剤治療が失敗していただけでなく、長期罹病患者(平均罹病期間9年)や著しい機能障害(平均Health Assessment Questionnaire DisabilityIndexスコア1.5~1.8)を有してもいた。これらの要因はいずれも、介入が有効である確率を低減させるであろう。

さらに、ベースライン時の平均DAS28スコアが6.3と高いにもかかわらず、平均C反応性蛋白値は正常範囲をやや上回っているにすぎず、平均赤血球沈降速度はほぼ正常値(約 30mm/時)を示した。急性期マーカーの変化はこれらの指標の要素であるため、急性期マーカーのベースライン値がこのように低いことは、ACR20改善基準の達成をいっそう 困難にしている。加えて、ベースライン時の平均DAS28スコア高値は、より客観的な疾患活動性測定項目ではなく圧痛関節数・腫脹関節数や患者評価によるビジュアルアナロ グスケールスコアによって決定されることが示唆された。長期罹病RA患者では、持続的な滑膜肥大と関節破壊のため、DAS28のこれらの要素は変化しにくい。

Golimumabの効果が過少評価されるもう1つの原因として考えられるのは、メトトレキサートとの併用が行われた患者が3分の2にすぎなかったことである。Golimumabが、他 のTNF阻害薬と同様に作用するならば、メトトレキサートを併用した患者が少なかったことはgolimumabの有効性を低下させたと考えられる。また、患者は一次無効者と二次無 効者の両方およびTNF阻害薬治療をうけることが困難であることが過去にわかっていた者であった。残念ながら、このサブグループの反応の内訳は示されていない。一次無効 者は、初回治療への反応が消失した二次無効患者よりも2剤目のTNF阻害薬に反応する可能性は低かった。さらに、最初のTNF阻害薬に耐えられなかった患者は、2剤目のTNF 阻害薬により有害作用を発現する可能性が高かった。多様な患者群が含まれていたため、golimumabが十分な有効性を示す確率は低くなったと思われる。

こうした注意点にもかかわらず、GO-AFTER研究の結果、golimumabは、類似した患者集団で検討されている他の生物学的製剤、すなわち、リツキシマブやabataceptと同程 度までRAの症状と徴候を改善させうることが示された。

以上の知見は、無作為化対照試験の基準のもと、最初のTNF 阻害薬治療が失敗した活動性RA 患者に対する2剤目のTNF阻害薬治療は有効であることを示すもので、リウマチ学界を安心させるはずである。また、さらに対象を絞った患者集団(活動性RA患者または早期RA患者、あるいはメトトレキサートとの併用が可能な二次無効者など)に2剤目のTNF阻害薬を用いる場合、2剤目のTNF阻害薬の影響はGO-AFTER研究で示された影響よりも大きいとわれわれは確信する。したがって、最初のTNF阻害薬に対する効果が不十分な例では、TNF阻害薬がその患者の疾患に最適な生物学的製剤のカテゴリーと考えられる場合、全例に2剤目のTNF阻害薬を利用する機会を与えるべきである。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.212

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