Research Highlights

RAの進行予測

Nature Reviews Rheumatology

2009年4月1日

Predicting RA Progression

カルプロテクチンは、活性化白血球から放出されるカルシウム結合蛋白であるが、関節リウマチ(RA)患者の滑液中に豊富に認められ、疾患活動性の炎症マーカーであることが明らかにされている。今回Annals of the Rheumatic Diseases誌に発表された研究で、カルプロテクチンが、RAにおけるX線上および臨床的な関節破壊の有用な予後マーカーでもあることが示唆されている。

Hilde Berner Hammer博士(オスロ市、Diakonhjemmet病院)率いる研究者らは、RA患者124例(平均罹患期間は2.2年)を対象に、ベースラインおよび10年後に 手のX 線評価を実施し(図1)、van der Heijde変法Sharpスコアの変化により疾患進行を評価した。その結果、ベースラインのカルプロテクチン濃度と関節破壊 進行との間に高度に有意な相関が認められ、カルプロテクチン濃度が高いほど10年目のRA重症度が高いことが明らかになった。抗CCP抗体やCRPなどの血清マーカーや炎症マーカーのベースライン濃度、およびベースラインの赤血球沈降速度で補正後にも、この有意性は、中程度ではあったが維持された。X 線上のRA進行を確実に予測できる、ベースラインのカルプロテクチン濃度の限界値は1.86mg/L(正常値0.91mg/L)であることが示唆され、その感度および特異度は、それぞれ69%および66% であった。Rheumatoid Arthritis Articular Damageスコアにより評価したところ、ベースラインのカルプロテクチン濃度は、10年目の臨床的関節破壊に対する独立した予測因子でもあった。

カルプロテクチンは、炎症性サイトカインに反応して肝細胞で産生される急性期蛋白とは対照的に、RA患者の炎症性滑膜の活性化白血球から直接放出される。このことから、カルプロテクチン濃度が患者の関節における炎症活動性の程度と直接的に相関すると著者らは示唆している。疾患の早期に測定可能なマーカーを用いて関節破壊を予測することができれば、個別の患者に合わせたテーラーメード治療の一助となり、治療の転帰が改善される可能性もある。「今後は、RA患者のカルプロテクチン濃度を評価し、その濃度を低下さ せる取り組みが行われるだろう」とHammer博士は述べている。

doi: 10.1038/nrrheum.2009.57

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