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パーキンソン病:パーキンソン病における非運動症状:PRIAMO 試験

Nature Reviews Neurology

2009年10月1日

Parkinson disease Nonmotor symptoms in Parkinson disease the PRIAMO study

非運動症状は、パーキンソン病を特徴づける様々な臨床的特性において、ますます重要な位置を占めてきているようである。パーキンソン病患者を対象にした、ある多施設共同研究では、どの程度これらの症状が認められるかについて焦点があてられている。その結果から、非運動症状の病態生理学および治療については、さらに研究が必要だということが示されている。

この数年間に、パーキンソン病(PD)に非運動症状が生じることが、かなり広く認識されるようになってきた。また非運動症状がPD 患者個人の生活の質(QOL)に与える影響についての正しい認識も広 まってきた。PRIAMO(PaRkInson And non Motor symptOms) 試験において、Barone らはPD 患者1,072 例の非運動症状を検討し、患者の98.6%に非運動症状が認められることを明らかにした1。この結果から、これらの症状に対する神経内科医の関心を高めることが重要であることは明らかである。

PRIAMO 試験において、数多くの非運動症状が同定、列挙、体系化されたことは非常に印象的である。特に、この試験に参加した患者のほとんどは複数の非運動症状があることを自覚していた1。実際、患者の 非運動症状の平均発症数は8 件にのぼった。特定の非運動症状を生じた患者の割合は、より少数の患者を対象にした過去の報告とは異なっていた。例えば、PRIAMO 試験において、その時点で排便障害(不完 全排便)があると患者が認めた症状の頻度は、過去にあった報告2 よりもかなり低かった。しかしこの違いは、この2 件の試験で研究者らが用いた症状の用語の定義が同一でないことから説明できるだろう。 PRIAMO 試験の結果により、PD の多様な非運動症状をよく理解し、現場で患者にこうした症状がないか尋ねることが必要だということが、すべての臨床医の意識に植え付けられたであろうことは間違いない。

PD 患者の非運動症状が正しく認識されていないことが過去に報告されていることを考えると、神経科医が非運動症状に確実に気づくことが特に重要であると思われる。定期的来院時に神経科医がPD 患者101 例を診察した前向き試験では、神経科医の診断精度、すなわち患者の自己評価と診療する神経科医の所見が一致する割合は、疲労に関してはわずか25%、うつ病に関しては35%、不安が42%、睡眠障害が60% であった。

PRIAMO 試験の研究者らの豊富な統計解析から、興味深い結果をいくつか取り上げることができる。たとえば、PD 患者で最も多くみられる非運動症状が疲労(58%)であることには、多くの臨床医が驚くだ ろう。しかしこの結果は、米国において、PD 患者が医学的障害保険を求める最も重要なただ一つの理由が疲労であるという報告4 と一致している。さらにPD患者の3 分の1 が、この病気で最も支障をきたす症 状として疲労を挙げており、また患者の58%が、この病気で最も支障をきたす3 つの症状のうちの1 つとして疲労を挙げている。

PRIAMO 試験では、患者の27.8%においてPD 発症時に関節痛または筋肉痛が生じていることも注目に値する。肩部痛がPD で意外に高い頻度で生じるが、これは滑液包炎や他の筋肉の疾患として誤診・治療 され、もっと明確なPD 症状が顕れてから正しい診断に至ることが多い。またPRIAMO 試験により、不安(25.4%)やうつ病(22.4%)など精神症状についてもPD で意外に多くの患者に認められることが明らかになった。

頻度の高い重要なPD の一側面である非運動症状は、PD の臨床症状の根底にある病理過程が脳以外にも広がっている事実も浮き彫りにしている。この病理過程は網膜、嗅覚器官、心臓交感神経経路、腸管神経 系、膀胱、さらに皮膚などの多様な部位に関わっている。さらにPD の神経化学的病理は黒質線条体ドーパミン経路の枠を超え、複数の他の部位や、脳内およびおそらくは末梢組織内の神経伝達物質にも関わっている。こうした現実は、多大な治療上の課題を課すものであると同時に、革新的な研究アプローチにもつながる。

PD の顕在化には腸管神経系が重要な役割を果たしていると推測されている6。このモデルでは、まだ同定されていない病理過程に曝されることにより腸管神経細胞の最初の病変が生じ、その後病原因子が迷走神 経を介して逆行性に中枢神経系まで輸送される。この仮説は、Honolulu-Asia Aging Study の研究者らが、便秘をPD の危険因子として同定した報告により支持されている。排便が1 日に1 回未満の人は、毎日排便する人よりも、PD を発症する確率が約2.7 倍高かった。さらに排便が1 日に1 回未満の人は、1 日に2 回以上排便を報告した人よりも、PD を発症する確率が4 倍以上高かった7。そうすると非運動症状は、PD が最初に報告されたころから知られている運動性症状よりも、もっと根本的な特徴であるかもしれない。

PRIAMO 試験は、著者らが自ら指摘するように、対照群がないため限界がある。またこの試験には進行したPD 患者が対象に含まれていないため、非運動症状すべてを捉えられていないかもしれない。こうした 限界はあるものの、PRIAMO 試験により、軽度または中等度のPD 患者における非運動症状の頻度と、これらの症状がPD患者のQOL に与える影響について、包括的な評価が行われた。PD における非運動症状の 起源と治療について、さらなる研究が必要なことは明らかであり、その目標はPD 患者一人ひとりのQOLの改善である。

doi: 10.1038/nrneurol.2009.156

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