環境:合成化学物質は海洋生態系に広く分布している
Nature Geoscience
2026年3月17日
Environment: Synthetic chemicals are widespread in marine ecosystems
農薬や医薬品などの人工化学物質は、海洋の溶解性有機物(dissolved organic matter)の相当な割合を占める可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。沿岸域が最も深刻な影響を受けており、溶解性有機物の最大5分の1が合成化学物質で構成されていることが判明した。この発見は、これらの化合物を確実に測定することが可能であることを示唆しており、海洋生態系への影響をより深く理解する道を開くものである。
農業、工業、および医療用途で生産された合成化学物質が海洋に流入している。水系への汚染物質流入規模を調査する試みの大半は、地域レベルにとどまり、地球規模での分布や残留性の理解は限定的であった。
Daniel Petrasら(カリフォルニア大学リバーサイド校〔米国〕)は、太平洋、インド洋、および北大西洋の沿岸域、珊瑚礁、および外洋域から採取された海水試料2315件を含む、公開されている溶存有機炭素(dissolved organic carbon)データセット21件を収集した。これらの試料から、248種類の人工化学物質を直接同定し、検出されたシグナル強度の中央値は2%であった。しかし、沿岸付近で採取された試料では、化学物質の中央値が最も高く(最大20%)、外洋試料でははるかに低い量(約1%)を示した。全体として、化学物質の存在量は、陸地からの距離や水深が増すにつれて減少する傾向が見られた。具体的には、プラスチックやパーソナルケア製品に使用されるような工業用化学物質は、あらゆる海洋環境に存在したが、農薬や医薬品は、沿岸部に近い海域でより多く検出された。
これらの結果は、沿岸域から外洋にいたる海洋全域で人工化学物質が広く分布していることを示している。著者らは、発生源から遠く離れた外洋に工業汚染物質が存在することは、環境中での高い残留性を示唆すると指摘する。また、著者らは、地球規模の海洋環境における化学汚染の広がりと有害な影響を追跡するには、大規模なモニタリングが必要であると提言している。
- Analysis
- Published: 16 March 2026
Kalinski, JC.J., Pakkir Mohamed Shah, A.K., Ruiz Brandão da Costa, B. et al. Widespread presence of anthropogenic compounds in marine dissolved organic matter. Nat. Geosci. (2026). https://doi.org/10.1038/s41561-026-01928-z
doi: 10.1038/s41561-026-01928-z
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