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材料:海洋から回収した炭素を生分解性プラスチックに変換

Nature Catalysis

2025年10月7日

Materials: Ocean-captured carbon converted into biodegradable plastic

Nature Catalysis

海水から二酸化炭素(CO₂)を回収し、生分解性プラスチックの前駆体へ変換するシステムを報告する論文が、Nature Catalysis に掲載される。この発見は、工業用化学物質を生産する持続可能な方法の可能性を示唆している。

海洋は、地球最大の炭素吸収源であり、人間活動によって放出される二酸化炭素の約25%を吸収している。しかし、この吸収は海洋酸性化を促進し、海洋生態系の不安定化リスクをもたらす。この炭素資源を活用することは、プラスチックなどの重要な化学物質や材料を生産する上で、化石燃料に代わる持続可能な選択肢となる。

Chuan Xiaら(中国科学院〔中国〕)は、二段階システムを開発し、天然海水から70%超の効率で二酸化炭素を低エネルギー消費(二酸化炭素1キログラム当たり約3 kWh〔キロワット時〕)で回収し、536時間にわたり連続稼働させた。炭素回収コストは、二酸化炭素1トン当たり229.9米ドルと算定され、現行技術と比較しても競争力があることが示された。まず、電気触媒を用いて、二酸化炭素は純粋なギ酸(formic acid)へと変換された。次に、遺伝子改変細菌Vibrio natriegensにより、コハク酸(succinic acid)へと転換された。コハク酸は、生分解性熱可塑性ポリマーであるポリブチレンサクシネート(poly(butylene succinate))の原料である。研究チームは、スケールアップした発酵槽で1リットルあたり最大1.37グラムの生産量を達成した。

著者らは、各工程(電極および微生物)で使用する触媒をさらに改良することで、このシステムが二酸化炭素から、燃料、医薬品、および食品など多様な製品に利用可能な数多くの化学物質を生産する用途にも応用できると示唆している。本システムは、拡張性と安定性を示すものの、工業利用のためには収率と統合性を向上させるさらなる最適化が必要である。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 12(つくる責任、つかう責任)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

  • Article
  • Published: 06 October 2025

Li, C., Guo, M., Yang, B. et al. Efficient and scalable upcycling of oceanic carbon sources into bioplastic monomers. Nat Catal (2025). https://doi.org/10.1038/s41929-025-01416-4
 

doi: 10.1038/s41929-025-01416-4

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