Nature ハイライト

抗生物質:黄色ブドウ球菌を標的とする新しい手法

Nature 527, 7578

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の抗生物質耐性株は治療がますます難しくなっていることが立証されている。その理由の1つは、この病原体が抗生物質から細菌を保護する細胞内リザーバーに入り込んで常在できることであるのが今回確認された。そして、このような障壁に対処するために、細胞を認識する抗体と薬剤を適当なリンカーでつないだ、「武装抗体」とも呼ばれる抗体–抗生物質抱合体(Antibody–antibiotic conjugate;AAC)を使って、リザーバー細胞を特異的に標的とする新しい戦略が開発された。ここで使われた抗体は、黄色ブドウ球菌細胞の表面を覆う細胞壁のテイコ酸に結合する。AACの結合によってオプソニン化した細菌が宿主細胞内に取り込まれると、抗体と抗生物質との間のリンカーが宿主のプロテアーゼによって切断されて、活性となった抗生物質が遊離する。AACの単回投与は菌血症のマウスモデルで効果を発揮し、MRSA感染に対する現在の標準治療薬であるバンコマイシンよりも優れていることが分かった。これらの結果は、既存の抗生物質でも、抗体を輸送体として送達する方法を使えば、臨床での有効性が引き続き確保されるだろうという考え方の原理証明となる。

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