Nature ハイライト

医学:癌幹細胞に新たな証拠

Nature 432, 7015

癌幹細胞という細胞が存在することによって患者の体内で癌が維持されているという説があり、これまでに白血病でその裏付けとなる証拠が見つかっていた。しかし固形癌の場合には、乳癌をのぞいてこのような幹細胞の証拠はなかなか見つけられずにいた。今回、脳腫瘍を発生させる細胞が同定され、効果的な抗癌治療の新しい標的になりうることが示唆された。 P Dirksたちは、この細胞集団には機能的な階層構造が存在することを、以前にin vitroで明らかにしていた。彼らは今回、この知見を利用してマウスに脳腫瘍を発生させ、腫瘍中の幹細胞特性をもつ特定の細胞集団をマウスの前脳に継代移植し、in vivoで腫瘍を発生させた。この新たな証拠に照らしてDirksたちは、的をしぼらない大ざっぱな治療法ではこの腫瘍誘発細胞をねらい撃ちすることはできないだろうと述べている。 細胞分裂と癌の関係を取りあげた今週号のInsight特集の Introductionでは、「幹細胞に似た挙動をとる少数の細胞が癌の維持に必要不可欠だというなら、癌の治療では最終的にこれらの細胞を標的にしなければならないだろう」と解説されている。

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