Nature ハイライト

構造生物学:ヒドロゲナーゼ中の水素原子を可視化

Nature 520, 7548

[NiFe]ヒドロゲナーゼは、ニッケルと鉄を使って、分子状水素の可逆的な酸化を触媒する。ヒドロゲナーゼは世界各国で盛んに研究されているが、それは生命工学分野に役立つ可能性があり、またエネルギー分野でも、水素の生産や変換のための生体模倣触媒を作る自然モデルとして利用できる可能性を秘めているからである。しかし、よく知られていることだが、タンパク質のX線結晶構造解析では、水素の検出は非常に難しい。水素が反応に直接関わっているヒドロゲナーゼの場合、これは特に大きな問題である。今回、緒方英明(ドイツ・マックス・プランク化学エネルギー変換研究所)たちは、[NiFe]ヒドロゲナーゼのX線結晶構造をサブオングストロームという高解像度で決定し、水素の大半について、金属イオンに近いものも含めてその位置を明らかにした。この方法により、水素分子のヘテロリティックな開裂の産物、すなわち、NiイオンとFeイオンを架橋しているヒドリド(H)と、システイン配位子の硫黄に結合しているプロトン(H+)を検出することができた。

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