Nature ハイライト

生化学:DNAポリメラーゼηによるリン酸ジエステル結合の形成過程を観察する

Nature 487, 7406

DNA合成は広範囲に研究されているが、その化学反応自体は、まだ可視化されていない。今回我々は、時間分解X線結晶学の手法を用いて、リン酸ジエステル結合の形成過程を観察した。活性型ヒトDNAポリメラーゼηとDNA、dATPをMg2+非存在下、pH 6.0で共結晶化した。ポリメラーゼ反応は、結晶をpH 7.0で1 mMのMg2+溶液に浸すことで開始され、さまざまな反応時間で凍結することにより停止させて、構造研究を行った。基質と2個のMg2+イオンは40秒以内に反応が起きる場所に位置するが、リン酸ジエステル結合の形成は80秒まで起こっていない。80〜300秒までの構造から、基質が減少して、ヌクレオチド転移反応生成物が増加する過程が明らかになった。過渡的な電子密度から、求核3′-OHの脱プロトン化とそれに伴って糖のコンホメーションがC2′-エンド型構造からC3′-エンド型構造へ変換する過程が律速であることが示された。第3のMg2+イオンが、新たな結合とともに現れて中間状態を安定化することがわかったが、これは2金属イオン機構のこれまで予測されていなかった特徴なのかもしれない。

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