Nature ハイライト

細胞:iPS細胞の拒絶

Nature 474, 7350

誘導多能性幹(iPS)細胞は、完全に分化した成体細胞を、特定の遺伝子群の発現により再プログラム化して胚様の状態に戻すことで作られ、治療に使える可能性が大きい。iPS細胞は完全に患者由来の細胞であるため、治療にiPS細胞を使う場合に期待される利点の1つは、免疫拒絶が起こらないと考えられることである。しかし、どうやらそうとは言い切れないようだ。レトロウイルス法あるいは非組み込み型エピソーム法で再プログラム化されたiPS細胞を作製しマウスに移植する実験で、このiPS細胞由来のテラトーマ(奇形腫)細胞が免疫系に拒絶され、同系のマウスに移植した場合でも同じ結果になったのである。この知見は、iPS細胞から分化した一部の細胞での遺伝子発現の変化が、T細胞依存性の免疫応答を引き起こす場合があることを示唆している。研究チームは、患者特異的iPS細胞由来の治療用細胞を臨床で患者に使用する前には、これらの細胞の免疫原性を必ず評価すべきだと考えている。

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