音の感知は、耳内の有毛細胞の先端にある繊毛の微小な束が動くことによって開始される。不動毛と呼ばれるこれらの繊毛は、内耳を満たす粘性の高い液体に囲まれているが、原子スケールの動きに対しても感受性を保っている。このような感受性の維持は、不動毛の間にある液体の粘性による抗力の大半を取り除くという仕組みで可能となっていることが、今回明らかになった。ナノメートル以下のスケールで、ウシガエル有毛細胞の不動毛における力の均衡を解析したところ、聴覚に使われる振動数では、毛束内にある不動毛のほとんどは外部の液体から遮蔽されており、ほぼ一体となって動くことがわかった。表紙は、毛束の動きのシミュレーションを表している。音の振動数がしだいに高くなると同調する不動毛が増えていき(中央)、最後には広い可聴振動数範囲で、毛束が1つにまとまって動く(奥)ようになる(Letter p.376)。
2011年6月16日号の Nature ハイライト
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