Nature ハイライト

医学:ねらうのは腫瘍だけ

Nature 429, 6992

必要とする組織にはうまく薬を到達させ、必要としない組織には薬が行かないようにするという仕組みは、医学の重要な課題の1つである。癌の治療ではこの問題が特に重大なのだが、それは癌を殺す薬は癌ではない組織には強い毒性を示すことがあるからである。J E Schnitzerたちは「システム生物学」の手法でこの問題にとり組み、内皮(血管内壁を覆う複雑な組織)中で、血液と組織の境界面にあるために静脈注射した薬剤が接触できるタンパク質の一群を見つけだした。 これらのタンパク質のうちアミノペプチダーゼ-PとアネキシンA1の2つはそれぞれ、正常な肺の血管と肺の固形腫瘍の血管とに特異的に発現されており、これらだけに結合するように作った抗体の標的になると考えられることを明らかにした。そこで、ラットを使いアネキシンA1に対する放射免疫治療を行ったところ、肺の腫瘍が破壊され、ラットの生存率が上昇した。内皮細胞の表面タンパク質の存在場所を正確にマッピングするこの方法によって、造影や治療に使用可能な、これまで知られていなかった標的タンパク質が見つかる可能性があると、Schnitzerたちは考えている。

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