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考古学:最初の芸術文化の担い手は誰?

Nature 430, 6996

およそ36,000〜30,000年前に栄えたオーリニャック文化では、人類が芸術的な感性を初めて発揮した。 この文化を生み出したのは、まず間違いなく現生人類であると考えられてきた。ところが、オーリニャック型人工遺物と一緒に出土した人骨が人工遺物の製作者だとする見方は今週号に寄せられた報告によって大きく揺さぶられ、この問題の行方は混沌としてきた。では、ネアンデルタール人がこれらの道具を製作できたということだろうか。 さまざまな遺跡で一緒に出土した人骨とオーリニャック型人工遺物が本当に関連したものかどうかについては、近年、次々と疑問が投げかけられてきた。有名なフランスのクロマニョン遺跡でさえ、最近の年代測定結果から、出土した人骨は道具類よりもかなり新しい時代に埋められたものであることがわかった。この種の遺跡で唯一残されていたのが、ドイツ南西部のシュテッテン近郊にあるフォーゲルヘルト洞窟で、ここは1931年に発掘され、人骨や動物の骨と道具類が多数出土している。今回N J Conardたちは、このフォーゲルヘルト洞窟の出土品を再検証した。すると、人工遺物と動物の骨は確実に古い年代のものだが、人骨はもっと後の、今から約5,000年前に穴を掘って埋葬されたものだとわかった。 これで現生人類の骨とオーリニャック型人工遺物を結びつける証拠はなくなった。また、ヨーロッパには現生人類と同時代にネアンデルタール人が暮らしていた。これらのことから、道具の製作者を探り、行動という化石に残らないものを人骨化石と結びつけることの困難さがはっきりしてくる。

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